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嫉妬と羨望
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一人で考えたってどうせ答えなんて出ないんだから、自分の目で確かめた方が確実だ。
後ろで結んである腰まで伸びた髪をフードの中に収め、目が隠れるように深くフードをかぶる。
············よし。これできっと大丈夫だ。
まだ姿を見えなくする魔法は使えないから、できる限り人間に見つからないように周辺を警戒しながら人里へ近づく。
しばらく歩いていると、ぽつぽつと灯りが見えてきた。
灯りに近づくにつれて大きくなる恐怖心を深呼吸をして落ち着かせる。
やがて降りきったところでケンタロウの後ろ姿を見つけ、木に身を隠しながら様子を見守る。
ケンタロウがある家の前で止まり扉を開くと、中から少し小柄な人間の女が出てきた。
歳はケンタロウと同じくらいだろうか。一つに三つ編みして肩から横に流している黒髪が綺麗だ。
人間の女は、ケンタロウに少し怒ったような顔で何かを言っていた。そんな人間の女にケンタロウは弱った様に笑いながらも、女の頭にポンポンと手を乗せ、優しく唇を寄せた。
あれはなんだろう。どういう意味の行為なのかな。
唇が離れると、人間の女は呆れながらも機嫌を直したのかケンタロウを家の中へ入るよう促した。
扉が閉まった後も窓から漏れる灯りをしばらく眺めていた。
ケンタロウが家に帰る理由は、きっとあの人間の女なんだろうな。あの人のこと、好きなのかな。
ケンタロウ······優しい顔してた。あんな顔、俺に向けてくれたことないのに。
じくじくと心臓の近くが痛む。なんだ、これ。なんか気持ち悪い。
喉の奥がひりついて苦しい。
やだな。いいな。
俺だってケンタロウに好かれたい。俺のこと、好きになればいいのに。
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