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騎乗位の話*
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べちゃ、べちゃと淫靡な水音が響く。それに混じり男の低い呻き声……否、喘ぎ声と言おうか、性的興奮を伴う声が聞こえてくる。
「あ、ダーヴィド、さん、」
古びたアパートでは、隣室に聞こえてしまうだろう。だが男は構わず、愛人の名前を呼んだ。
「ヨナ、声が大きいよ」
微笑む声と軋むベッドの音。見れば一糸まとわぬ金髪の男の上に、同じく裸で一回り大きい銀髪の男が跨っていた。
「だって、気持ちいい、から」
「そうか。」
突き上げる衝撃に裏返った声で歓喜する銀髪の男。短い髪が揺れ、紅潮した顔で快楽を貪った。それはどこにでもいそうな、健気な青年だった。蛸の触手のような、奇怪な腕を除けば。
「おいおい、締め付けるな、ヨナ。俺のがちぎれちまうよ」
触手は粘液を伴って、金髪の男の身体を這った。下品な水音は、男らの接合部とこの触手がもたらしていたらしい。
「ごめんなさい、ダーヴィドさん、オレ、っ」
「……謝らなくていい。」
ダーヴィドと呼ばれた金髪は、もう一度優しく微笑み、腰を強く持ち上げた。
「代わりにもっと鳴いてみな」
甘く、人を陥落させるような声で彼は"ヨナ"に囁いた。相手は触手から粘液をだらりと垂らし、腰を艶かしく動かして、
「あ……ぁ、イイっ……」
恍惚として顔を歪ませ、娼婦のように善がってみせた。だがこれは演技ではない。証拠に緑青の瞳が押し寄せる快感に濡れていた。
「ヨナタン」
「卑怯、です、そういうときに、そういう呼び方、は、」
妖しい笑みであだ名ではなく本名を呼ばれ、困惑するヨナタン。ダーヴィドはからかうように腰から尻を撫で、舌なめずりをして返答した。
「卑怯も何も、俺が出したい時はいつも言っているだろう」
腰を回しながら、答えを紡げないヨナタンが喘ぐ。
「それとも刷り込みで、俺が名を呼べば淫乱になるのか、ヨナタン?」
「あ、だめ、ダーヴィド、さん!」
辛うじてでた愛人を求める声。彼が強く穿つと、ヨナタンは仰け反って、先程の低音からは想像できないような甲高い声を上げた。自身や腕の触手からは白い粘液が溢れ、目には涙を浮かべていた。時間差で、彼の尻からも白濁が流れる。疲労から、自分より背の小さいダーヴィドの胸に全身を預けた。
「いい景色だったよ」
キスして、という彼の要望に相手も応じ、舌を絡ませるヨナタン。この銀髪の男の目は、普通の人間とは異なっていた。瞳孔が横に細長いのだ。それをダーヴィドは気にしないどころか、愛くるしいとすら思っていたようだが。
「ダーヴィドさん、すき、だいすき、」
「分かってるよ。俺も愛してる、ヨナ」
幼い口調で甘えてくるヨナタンに、ダーヴィドも笑みを浮かべて応じた。尤も、彼は"仕事"のために多くの女を抱くが真に愛し合ってセックスするのはヨナタンだけであろう。愛人と揃いのピアスが、かき分けた金髪から見える。
「ずっとそばにいて」
触手を絡みつかせ、甘える様子は親子や仲のいい兄弟にも見える。だが違う、彼らの関係は――
電話の呼び出し音。ダーヴィドは即座に出ると、短い応答の後すぐに切った。
「仕事だ、新たな臓器ブローカーが見つかったらしい。話を伺いに行くぞ」
「はい、ダーヴィドさん」
先程の色香は消えていた。血の掟で結ばれた、残忍な愛人達とでも言おうか。窓の夕日が不穏に輝いていた。
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