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誰だ?
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一度秀徳に帰り、そのあと、俺とテッちゃんは青峰と会っていた。
場所は近くの公園。
また、あの公園の中のバスケットコートだ。
青峰は転がっていたバスケットボールを持って、適当に放る。
それでシュートが決まってしまうのだから、ホント、キセキは怖いわー。
なんていうのは、軽い現実逃避なのだが。
「なぁ、どうしてテツそっくりで同性同名の奴がテツと同じ戦い方してんだ?」
戻ってきたボールを人差し指で回しながら、青峰は問う。
「あはは、確かにすごい偶然だよね?。俺も最初はびっくりしたんよ! いや?、奇跡奇跡!」
なんとか誤魔化そうとする。
けど、青峰の顔は険しくなる。
「うるせぇよ。俺が聞いてんのは、そいつが誰かってことだ」
「いや、だから、ただの偶然……」
「そいつは、誰だ?」
「……………………………………っ」
「答えろ、高尾」
どうしようか。
まぁ、そもそも、隠しておく必要はないんだけど。
けど、言うのが怖い。
青峰がテッちゃんのことを知って、そしたら、きっとテッちゃんを手に入れようとするだろう。
そして、もしテッちゃんがそれを受け入れたら?
また、テッちゃんを失う?
そんなの嫌だ。
絶対に、嫌だ。
十六年間、ずっとずっと待ち続けたテッちゃん。
ようやく、取り戻したんだ。
なのに、また失うなんて、嫌だ。
嫌だよ…………。
「大丈夫です。高尾くん」
テッちゃんがそう言う。
そちらを見ると、テッちゃんは力強く頷いた。
「お久しぶりです。青峰くん」
その言葉に、青峰の表情は固まった。
「テ……ツ……?」
「そうです。随分と大人びましたね。中身はアホ峰のままのようですが」
あの青峰が、アホ峰と言われてもなにも言い返さないのは、それほど衝撃がでかいからだろう。
「ホントに……テツ、なのか?」
「仮にも元相棒で元恋人であるのに、なに言ってんですか、まったく」
青峰は数秒固まる。
そして、静かに涙を流した。
「テツ……。テツ!」
次の瞬間には、テッちゃんは青峰に抱き締められていた。
「テツ。テツ。テツ!」
「五月蝿いし、痛いです」
そうテッちゃんが言っても、青峰は離さない。
それに、諦めたようにニコリと笑い、頭を撫でた。
二人は本当に恋人のようで、
「…………っ」
胸がギュッと締め付けられた。
心臓を何本もの針で刺されたかのような、鋭い痛み。
なくしたくなくて、
失いたくなくて、
もう、大切なものを奪われたくないのに、
体はまるで言うことを聞かない。
二人の間に入って、
テッちゃんを引きはがして、
こいつは俺のだって言いたいのに、
入る隙間すらないこの二人の間になんて、入れないとわかっているから。
ただ見ていることしかできない俺は、泣くとこもできず、痛む胸を押さえてた。
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