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意外と単純なことなんだ
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『タクミくん、カフェのバイト始めたって本当?』
「ああ。」
タクミは経験もあって、仕事を覚えるのは数日で終わった。
タクミを職場に迎えた初日、柏原さんは不満そうだったが、今ではタクミを尻に敷い……仲良くしている。
『あとね、出張から帰ってくるのは、26日になりそう。
出逢ってから初めてのクリスマス、一緒に過ごせなくて残念だなぁ。』
「一生インドから戻ってくんな。」
『うわぁ、翔ちゃんの言葉責めなんか懐かしくて嬉しいな…。』
こんなやり取りをするのも久し振りだった。
コイツは仕事が忙しく、今日まであまり電話がかかってきていなかった。
電話口から聞こえる声に、コイツがいた騒がしい日常を思い出した。
『僕も会社辞めて、カフェで働きたいなぁ…!
……翔ちゃんは嫌がると思うけどさ。』
不意を突かれた。
初めて、コイツの弱音を聞いた気がする。
弱音というか、俺の釈然としない態度を冷静に受け止めたみたいな感じ。
いつも能天気な返ししかしないのに、今日は妙に落ち着いている。
それがなんだか怖かった。
「………もう、切るぞ。」
これ以上電話をしていたら、何か言われそうで怖かった。
何か、いつもと違うことを。
『…うん、ばいばい。』
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