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黒くて小さな精密機器
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「タクミ、ポケットの中……」
俺は兄貴を担いで歩いていた。
俺より図体のデカい兄貴は、ずしりと背中にのしかかる。
「もう、何回言ってんすかそれ…」
「は、や、くぅ」
「ちょっと待ってください」
道端で兄貴を下ろし、ポケットの中をほじくった。
右足のポケットに、手を入れるとそれはあった。
黒くて小さい、精密機器のようなものだ。
イヤホンも付いている。
「何だこれ」
「あ、それそれ」
兄貴は俺の手からそれを受け取ると、耳にイヤホンをつけた。
「音楽でも聴いてるんすか?」
「違う違う、翔ちゃんの声…」
「は?……まあ、いいや。肩に乗ってください」
兄貴に背を向けて、乗るようにジェスチャーする。
けれど、兄貴は乗ろうとはしない。
「兄貴?」
しゃがんだまま振り返ると、兄貴は真っ青な顔で座っていた。
さっきまで紅い顔をしていたのに、もう酔いから醒めたみたいだ。
もしかして、気持ち悪いのか?
様子がおかしい。
そう思っていたら、突然兄貴は叫んだ。
「………タクミ!!!」
「は、はい?」
「翔ちゃんの所へ戻れ!!!早く!!」
尋常じゃないみたいだ。
血相を変えた兄貴の顔は、翔の元へ戻るよう急かしている。
翔に何かあったに違いない。
「は、はい!!」
俺は、数分前まで居た所へ全力疾走した。
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