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柏原さんの取り調べ
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最近、多田さんの様子が変だ。
いつも手早く客捌きをこなすのに、今日だって上の空が多くて、仕事に身が入っていなかった。
それに……
「仲原さんと何かあったんですか」
仲原さんが店に居ない時を見計らって、気になっていた事を率直に尋ねた。
すると多田さんは、答えづらいのか、黙ったまま頭を掻き上げた。
そして口を窄めながら小さく、別に…、と呟いた。
隠し事をしているのは一目瞭然だった。
「じゃあ、仲原さんを変に意識してるのは何ですか。最近はよく考え事しているようだし。仲原さんのこと考えてますよね」
取り調べのように捲し立てると、多田さんは焦りを見せた。
「は、はあっ?勝手に決めつけんなっ!」
「別に隠さなくても良いです。私全部お見通しですから」
「お見通しって、なんだよ」
本人も心の奥で自覚していると思うのに。
でもそれを第三者が指摘してしまうのは良くない。
私は2人の媒介者のような立場に立たなければいけないと思った。
「…私、多田さんの力になりたいんです」
瞳を潤わせ、上目遣いで言うと、多田さんはやりづらそうに頭を掻いた。
……まぁ、力になりたいのは仲原さんの方なんだけど。
「…じゃあ、ちょっと聞いてくれるか」
「はい」
多田さんはポツリポツリと、仲原さんの話を零した。
友達と言われてショックだったこと、そう言われてから距離感が分からなくなったこと。
「友達って…どういうことですか」
「そのまんまだけど」
「本当ですか」
仲原さん、嘘ついちゃったのか。
それが恣意的なものか意図的なものかは推測できなかったけど、多田さんに動揺を与えたのは事実だった。
「情けないことに、俺は友達が少ないから、今までの距離感が友達特有のものだと分かんなくて。そんで急に自分が恥ずかしくなって…」
「な、なるほど」
多田さん、勘違いじゃないですよ。
そう伝えたいけど我慢した。
きっと仲原さんも、何か思うことがあって嘘をついてしまったのだろう。
「それで、さ」
「はい」
多田さんは何か言いづらそうだった。
伝えたいけど、言葉が出てこないんだろうか。
「何でも言ってくださいよ」
「…えっと」
多田さんは手を弄ったり、頬を掻いたり、落ち着かない様子だ。
私がヤキモキしていると、多田さんは吐き出すようにこう言った。
「…さ、最近アイツのことをよく考えるんだ」
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