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デート
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「デート…?!」
「そうです!デートです」
柏原さんに相談なるものをしていたら、そう提案された。
デートなんて、浮かれた言葉に俺は顔を赤くした。
「な、なんで俺がそんなこと…!」
「仲原さんと付き合いたくないんですか?!」
当然の如く言い放つ彼女に、俺は少し戸惑った。
世間一般では好き→付き合いたいっていう流れになっているけど、そこまで考えたことは無かった。
「今はこの気持ちに精一杯で、そこまでの余裕はねえよ…」
「なるほど…」
ふと彼女の顔を見ると、ニヤニヤと微笑んでいた。
だから、話すのに抵抗があったんだ。
先程まで真剣に話を聞いてくれたから、正直に打ち明けたというのに。
「ずっと気持ち抱えたままじゃ、苦しいですよ。デートして告白して、付き合っちゃいましょうや」
「簡単に言うけどな…アイツは友達としか思ってないぞ」
「でも、昔は多田さんに恋してた訳じゃないですか」
何で知ってるんだ。
彼女は俺の言葉も気にせず、続けた。
「デートって言っても、友達と一緒に遊びに行く体ですよ。あ、丁度映画のチケットもあるし」
そう言って、彼女は鞄の中を弄ると、本当に映画のチケットを取り出した。
それを俺の胸に強引に押し付けると、得意そうに鼻息を吹いた。
「準備万端じゃねえか…」
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『一緒に行かないか』
よし。
一日中、頭の中でシュミレーションをした。
頭の中の俺は完璧に誘えているが、現実はうまくいかないかもしれない。
そうならないことを願いながら、息を整え、咳払いをする。
帰り際、今日も店の外で待つアイツに、会釈をした。
何か言いたげな俺の様子に、コイツは俺を伺った。
「どうしたの?」
「映画のチケット貰ったから…やる」
ポケットに入れたチケット2枚を差し出した。
案の定、コイツは少し驚いていた。
受け取ったチケット2枚と俺を一瞥し、こう言った。
「…一緒に行く?」
「あ、ああ」
頭の中で何度も練習したって、現実には敵わない。
「楽しみだなあ」
嬉しそうに笑うコイツを見て、返す言葉が出てこない。
ただ溢れてくる想いを隠すのに精一杯だった。
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