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『ねぇ、お願い』
中1の頃だったと思う。
栞を作って欲しいという突拍子も無い要求に、あの時の俺は頭を捻らせていた。
『…はぁ?』
『本当は写真でも良いんだけど…』
『いや、何でだよ』
クラスの人気者で、昼休みは校庭に遊びに行くようなアウトドアな奴だったが、一方で放課後になると、人気のない教室で静かに本を読むような奴だった。
俺も本を読む方だったから、よく強引に連行され、一緒に本を読んでいた。
『翔ちゃんの証みたいなものが欲しいんだ』
『何だよそれ…』
証、なんて重々しく言われて、俺はすぐ死ぬのかと心の中で突っ込んだ。
『…会えなくなった時の為に、何か残しておきたいんだ』
とても真剣な表情で放たれた言葉に、背筋が伸びたのを覚えている。
重い、とか簡単に言ってはいけないと思った。
『…俺は消えねぇよ。消えるのは、お前の一時的な想いだけだ』
『消えないよ。僕の心の奥に刺さって、抜けなくなってる』
『……抜けよ』
『抜いても深い傷が残るよ。それも、愛しい傷がね』
膝をつき、胸に手を当てながら言うコイツは、ふざけてるとしか思えない。
どうせなら、演劇部に入れば良かったのに。
こんな言い回しをするのも、小説の読みすぎだと思う。
『お前…よくそんなキザな台詞が言えるな』
『うーん、自分でも恥ずかしかった…』
男2人で顔を赤くして、なんて酷い空間だ。
コイツは膝に付いた埃を払うと、席に戻った。
『俺が好きってよく言うけど、お前のはふざけてるようにしか思えない…』
『えぇ〜?本気なのに…』
『本気?どこが?』
『じゃあ、翔ちゃんの作った栞をずっと持ってるから。そしたら、僕の気持ち認めてくれる?」
『ずっとって、その頃には忘れてるだろ…』
『忘れないよ。確信してるけど、…僕は君がずっと好きだよ』
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