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理人
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彼は僕の声に振り向き、「何言ってるんだよ」と笑った。
その瞬間、僕は彼が翔ちゃんではない事を悟った。
翔ちゃんは僕に笑いかけない。
しかし、目の前の男はニコリと、人形のように笑みを浮かべていた。
「突っ立てないで、早くご飯食べようぜ」
「…ふざけた芝居はよせ。嘘は分かってるんだ」
彼の目をじっと見つめると、彼は諦めたように溜息をついた。
頭を掻き、「…つまんないの」と小さく呟いた。
「お前、全然変わってねーな」
「もしかして…君」
「あぁ。お前とは、ベッドの中で仲良くしたよな」
「…………」
そう。
彼と一度だけ寝たことがある。
それがキッカケで、翔ちゃんに嫌われてしまった。
僕の本意ではなかったことだ。
「お前が嘘なんか付くから、翔が閉じこもっちまったじゃねえか」
「嘘…?」
「友達って言っただろ。あんな見え見えの嘘なんかつくから、アイツが動揺しちまったんだよ」
「……キミが何か言ったんだろ」
「翔のカラダ目当てで、お前が嘘を付いてるって?」
「な、何てことを…」
彼は愉しそうに、声を上げて笑った。
まるで、僕が悶える姿が滑稽だという風に。
「っはは。もう笑えるぜ…」
手を叩く彼の姿に腹が立ったが、我慢した。
「…君の名前は」
「理人」
「じゃあ、理人。お願いがある。……翔ちゃんに会わせろ」
「嫌だね」
即答だった。
行儀悪く、彼はテーブルの上に足を組んで座った。
「どうして」
「そんな言い方されて、俺が言うこと聞くと思った訳?…土下座しろ」
よく見ると、彼は笑ってなんかいなかった。
口はほくそ笑んでいるが、目の奥は氷のように冷たい。
彼は人差し指で床を指した。
ここに土下座しろということだろう。
僕はすかさず、床の上に正座した。
「お前、プライド無いのかよ」
「プライドなんて下らないもの、もう捨てた」
「カッコつけるのは、まだ早いな。早く頭床に付けろって」
僕は床に頭を落とした。
両手も付け、「…翔ちゃんに会わせてください。お願いします」と言った。
「………」
彼は無言だった。
顔を見ようとして頭を上げたら足で踏まれた。
その勢いで、額が床に打ち付けられた。
「……っぐ」
ゴン、と鈍い音と共に痛みに襲われた。
すごく痛い。
「……やっぱり、土下座だけじゃ足りねぇな」
「…舐めろ」
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