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中学一年生
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とっくに門限の時刻は過ぎていたのは気付いていた。
帰宅したら、真っ先に母親に叱られるだろう。
それでも多田くんを放って置けなかった。
僕は汚いタオルを水に濡らして、彼の腫れた部位を冷やした。
痛々しいその場所を、まるで隠すかのように。
「…ってぇ…」
小さな呻き声に、僕は顔を上げた。
痛そうに顔を顰める彼の顔を見て、先程とは違う雰囲気を感じた。
正気に戻ったのだ。
「多田くん…!大丈夫…?」
「お前、何でここに…。っつ…」
「……良かった、僕が分かるんだね」
緊張が解けて、僕は肩の力が抜けた。
多田くんは僕を見ると、眉をひそめた。
「……はあ?ていうか、何でうちに」
「ほら、今日多田くん休みだったでしょ。プリント届けに来たんだ」
「ちょっと待て…、お前まさか…」
「うん?」
多田くんは目線を下にやって、自分の身体を確認した。
濡れタオルと体操服の名札を見た瞬間、彼は後ろに下がるように跳ね上がった。
酷く困惑した顔をしていた。
「…お前、見たな」
「えっと…」
何と言うべきか分からない。
僕は肯定も否定もせず、ただ黙っていた。
すると、彼は口を開いた。
「…これは俺が自分で怪我したんだ。誰かにやられた訳じゃない。だから……誰にも言わないでくれ」
震えた声に、真っ青な顔。
嘘なのは分かっていた。
けれど…、
「…分かった。約束する。絶対誰にも言わないよ」
真実を問いただしてはいけないと思った。
これが正しい判断だとは言えない。
けれど、彼自身が詮索される事を嫌がっている。
ただのクラスメイトの僕が、首を突っ込んでいい事情ではない。
「…本当か」
「うん。神に誓うよ」
彼の不安な目を見つめた。
真摯に、真っ直ぐな気持ちで。
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