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これはいつ、何のために書いたか思い出せないものww
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それは驚くようなこと
まだサウラ・ムーがいた頃の話。
世界にはおだやかな事柄しかなく、ポニレもメナも怖いということを知らなかった。
サザリは人を驚かすのが好き。
だからこの世のどこかには、びっくりするようなことがらがいっぱいあると信じている。
少しは怖いことも、あった方が面白いよ…
そんなサザリをメナはたしなめる。
世の中は、びっくりしないですむほうがいいんだ。
サザリは思う。
そうなのかなあ……
メナは薬師(くすし)だ。
この世界にだってケガはある。
歩き出したばかりのこどもは転ぶし、お年寄りは肩が凝ったり、腰が痛んだりする。
そんなとき、メナの薬はてきめんに効く。
だからメナはすごい。
偉い。
でもメナは自分を偉いと思わない。
人には役割があるんだよ。
メナはいつも言う。
なら、僕の役割は何?
それは自分で見つけるんだよ。
みつからなかったら?
メナは笑むけど何も言わない。
サザリはちょっとしたいたずらをする。
いたみどめのレキの葉を、笑い草と取り替えておいたり。
引き戸であるメナの家の扉を、押し戸に変えておいたり。
押し戸でもいいか、と思って使っていたら、次は引き上げ蓋のような上向き開きの扉になっていた…
新鮮ないたずら。
これがサザリの才能なのかもしれない。
でもどんなことに使ったらいいのだろう。
メナは考える。
薬を調合しながら、
考える。
いつもおちついてるなあ…
メナのことは好きだけど、あまりにもおちつき払ってるよ。
そこがいや。
少し慌ててもらおーじゃないか。
川からメナが家に戻る道に、ナワを張った。
水を汲んで戻るメナを、軽く転ばして、
こら!
くらい怒られたい…
来た。
端を引く。
あ、メナじゃない!
ポニレ!
メナの年老いたおふくろさん!
とっさに抱きとめた。
ポニレは転ばず水もこぼれず。
でもサザリは、
サザリは自分が許せなくて…
駆けていった。
森まで。
走り去るサザリを、一緒に水汲みに来て少し遅れたメナが見送る。
ただ見送る…
森。
村にほど近い青の森でなく、むしろとなり村のほうが近い紅(べに)の森まで来てしまった。
胸がどきどきしてる。
あのままポニレが転んでいたら、僕は自分が許せなかったと思う。
僕はもう
大人になろう。
いたずらは…ほどほどに。
そう決心して、あやまりに行く道すがら、道を間違えて入ってしまったとなり村。
大人たちが集まって、何やら相談をしている。
メナ様はこの村にも必要だ。
何でとなり村にお住まいだ?
こちらの村に来ていただこう!
メナがいなくなってしまう。
そんなのいやだ。
いやだ。
僕、
さっきはごめんなさい
さえ言ってない。
僕………
森を走る。
風みたいに走る。
こんなにも、メナが好きなんだ。
いなくなってほしくない!
家についた。
メナ!
メナ!
となり村に行かないで!
ここにいて!
返事はない。
恐る恐る扉を開ける。
開かない。
あそうか。
僕がいたずらで引き上げ戸にしたんだった。
上方に引き開ける。
室内にはポニレ。
何か祈りを捧げてる。
メナが二人に…なった!
えええええーーーっ!!?
メナは薬師。
村のみんなの健康を守る。
ポニレはメナのおふくろさんで、いくたりにもメナを増やすことが出来る。
紅の森にもおまえが必要だ。
お行き。
はい。
かあさん。
お達者で。
新しいメナが旅立ち、前からのメナはいつものように、僕に優しくほほえんでくれる。
でも…
僕が見たのはどういうこと?
メナの頒布だよ。
私は知識の精霊なんだ。
かあさんが私を株分けし、世界に知識と健康を広める。
それが私の役割なんだ。
いまはもうわかる。
世界に驚きは必要ない。
おだやかにたおやかに、時が過ぎていけばいいのだから。
それでもね。
メナは言う。
君という存在もやっぱり必要なんだ。
そうだろうか。
そうだよ。
私から株分かれした私は、私と同じ知識しか持たない。
でも君は、私と違う考えを持っている。
君はレキの葉と、笑い草が、似てるけど違うと知っている。
みんなは知ろうともしないよ。
私は思う。
君は新しい感覚や知識のために生まれてきた。
私は君に私の知識を授けようと思う。
メナから生まれたメナは、メナ以外のものにはなれないが、君は、サザリは、全く別のものになっていくに違いない。
それはきっとすばらしいことなんだよ。
僕の頬に涙が伝った。
僕の意味を見いだしてくれた人。
僕はメナが好きだ。
とっても好きだ。
あれから220年。
メナはもう全てこわれてしまった。
でも僕は生きている。
ポニレがかつてメナにしたように、今、僕を知識として頒布している。
僕の知識はメナのものと、僕自身が調べ蓄えたもののニつから成っている。
僕ももうすぐこわれるだろう。
でも心配はしていない。
メナと僕を継ぐレリカがいる。
メナの知識と僕の知識、さらにレリカ自身の知識を宿した新しい存在だ。
僕がいなくなっても、ポニレがレリカを頒布してくれる。
僕たちは永遠を生きるのだ。
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