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付き合っている2人
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「んっ」
不意に漏れた自分の声で目を覚ます。頭はぼんやりとしていても、意識が浮上すると途端に体を覆うこのふかふかに触覚が過敏になった。
気持ちいい。温かい。でも、京の匂いじゃないな。ちょっと不満。
布団に埋めた顔を外に出し、俺はパチパチと瞬きを繰り返した。
真っ白な天井が、ベッドを囲うカーテンに透けて夕日の色に染まり淡いオレンジ色になっている。なんだか心がほわほわする色だ。
俺は上体を起こすと、覚醒しきらない頭でここに至る経緯を思い出した。
ガラッと扉が開く音がする。保健室の先生が帰ってきたのだろうか。別に隠れているわけでも、悪いことをしてるわけでもないのに、こうしてカーテンで隠されているとドキドキするのは何故だろう。見つかるのが少し怖い。
足音はベッドに近づいていた。もう一度布団に潜ろうとしたところで、躊躇いもなくカーテンが開かれる。
「あ、起きてた」
布団を掴んだ手が、その声に震える。漆黒の髪の、その奥に見える大好きな瞳に俺はパクパクと口を開閉させた。
「何その動き」
くすりと笑ったその声にぞくりとする。それなのに同時に安心している自分もいて、俺は布団から手を離すと、京の細い腰に抱きついた。
京はそれを退けることもせずに、静かにベッドに腰掛けた。
「体調はどう? 朝よりはマシかな」
「うん……」
今朝の朝礼、俺は疲労と貧血でぶっ倒れたのだ。幸い後ろに並んでいた男子が支えてくれたため頭は打たなかったが、その後すぐに意識が途切れた。今週先週と家の仕事に追われ、また試験期間も終わったばかりだったので、疲れが溜まっていたのだと思う。調子が悪いことは自覚していた。
「本当、心配したんだからな。隣のクラスの奴が倒れたって聞いて、まさかとは思ったけど」
「ごめん、なさい」
「いいよ。ずっと顔色悪かったのに、放っておいた俺もいけないし」
京はそう言うと優しく俺の頭を撫でた。京はいつも俺に甘い。自己管理ができていない俺が一番悪いはずなのに。
「あーあ」
京は突然ボリュームを上げてため息をつくと、俺の肩に体重を乗っけてきた。京も線は細いが、それでも俺より大きい。重くて思わず唸る。
「やっぱり綴と同じクラスがいいな。そうしたら、今回みたいなことがあってもすぐに気づけるのに」
「無理だよ。親同士の繋がりがありすぎるから」
「わかってる。わかってるから、言ってるんだよ」
京は顔を顰めさせた。
俺の家と京の家は、明治とか、もしかしたら江戸時代から交流のある名家だ。花街文化を発展させ今なお伝統の街を守り続ける金扇家と、それの援助をし続け、現在は鉱山経営に携わり世界的にも有名な企業となった五十山家。
深すぎる繋がりは、例え親族でなくてもクラス分けに影響してしまう。おかげで、俺と京は一度も同じクラスになったことがない。
「……言っても、しょっちゅう一緒にいるじゃん」
ボソッと呟いた言葉を隠すように、俺は無理やり京を引き剥がし、ベッドから退散した。ソファには京が持ってきてくれたらしい俺の鞄が置いてある。そのまま保健室を出ようとすると「ちょっと待った」と声がかかった。
「ちゃんとベッドを直してからじゃないとダメだろ。一緒に帰るから待て」
俺に注意しておきながら、後始末をしているのが京で少し笑えてしまう。京は本当に、面倒見が良いというか、世話焼きだ。
俺も京と帰りたいのは同じ気持ちだった。だから、京の姿を見て罪悪感を覚えつつも我慢して待った。
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