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閑話2
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そのとき、コンコンとノック音が聞こえた。綴の体はピタリと止まった。しかし、当の本人は舞に夢中であったため、どうして自分の頭から演奏が消えたのか、なぜ自分は動きを止めたのかわからなかった。つまり綴にノックの音は聞こえていなかったのである。
静止したまま黙っていると、またノックの音が鳴った。
このときようやく来客があることに気がついた綴は、ドアの方に歩み寄った。
ドアノブに手をかけてから、自分が女物の着物姿であることに気がつく。普通に開けることはできないし、だからといって少しだけ開けて用件を聞くのも失礼だ。
綴はその場で固まってしまった。
「綴? 俺だよ」
その声は紛れもなく五十山 京のものだった。
綴は安堵のため息をつくと、ガチャリとドアを開けた。
「? あぁ、稽古中だったのか」
隙間程度しかドアを開けなかった綴を訝しんだが、京はすぐに納得したようだった。
「何の用?」
「借りてた本返そうと思って」
「あぁ」
綴はドアの隙間から細い腕を伸ばした。本だけ渡して帰れの意味だった。しかし、廊下の京は一向に本を渡さない。
「京?」
「俺、綴の稽古みたいんだけどなぁ」
わざとらしい、ひどく甘えたな声を京は出した。イメージとまるで合わないその声に、綴は「バカ言うな」と少し怒った口調で答えた。
「俺、稽古中は集中したいからダメ」
「前は見せてくれただろ」
「あれは……気分がノッてたの!」
京が言うのは中3のときのことだ。京と付き合い始めたのが中2なのだが、それまでダメだダメだと言われて披露できなかった恋の唄をお師匠様にようやく認められたのだ。それが嬉しくて、付き合いたてで舞い上がっていた俺は京に見てほしいとせがんだ。それを京が断るはずもなく、見てもらったのだが……。その後初めてエッチをした。
綴の頰はそのときのことを思い出して熱くなった。
「そんなことを気にしてるの? 綴はお子ちゃまだなぁ」
「なっ、なんでそんなこと京に言われなきゃいけないんだよ!」
「もう高校生なんだから、みんなセックスの一つや二つしてるよ」
さらっと言ってのけた京に頭突きを食らわせたくなる。
確かに綴はそういった経験には乏しいが、それは京も一緒だ。京とはずっと一緒にいたのだから。
「京だって、あんまりしたこと無いくせに」
「……」
「え、やってないよね? 京も俺と一緒だよね?」
京が突然黙るものだから、綴は不安になって詰問した。しかし、どれだけ問いかけても返事は返ってこない。ドアの隙間から、そこに彼がいることはわかっているのに。
どうしよう。俺以外に相手がいるの? でも、いてもおかしくないのかな。だって、もう高校2年生だし。俺が満たせてあげられないから、京は違うところに相手がいて……。ありえるよね。だって京は五十山家の一人息子で……。
「やだ! そんなのやだよ、京!」
綴の体は勝手に動いていた。ドアを開けて、京に抱きつこうとした。しかし、ドアが開いた瞬間に一番に見えたのは京の嬉しそうな笑みだった。
そしてドアが開かれた瞬間に京に抱きつかれて、そのまま体は自分の部屋へと収まっていった。京が後ろ手に鍵を閉めた。
「つーかまえた」
京の腕の中に収まったところで、綴はやっと自分が嵌められたことに気がついた。気がついた瞬間、綴は精一杯の力で抵抗した。しかし、京の腕はビクともしない。
もがくことに疲れたとき、綴は京の胸に寄りかかった。
「やっと静かになったな」
京はそう言うとやっと綴を解放した。綴は顔を赤くして、軽く京の胸を叩いた。
「ね、見せてくれるよね?」
綴の大好きな京の笑顔で言われれば、もう断ることなんて不可能なのだ。
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