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不快
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掲載の順番を間違えました……_(:3」z)_
混乱された方ごめんなさい。
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綴と別れ、教室に戻った。
教室に入ると、すぐに誰かしらが俺の周りをうろつく。話しかけてくる奴もいれば、ただ近くにいるだけの奴もいる。
彼らに共通するのは「俺の記憶に残りたい」ということ。
俺は自分の存在が与える影響についても、俺の家が彼らに与える利益も理解している。普通であれば「俺なんてそんな……」と謙遜するところかもしれないが、そんな態度ではいずれ喰われる。
人の上に立つとは、自分についても他者についてもよく知っておかなくてはならない。
適当に彼らをあしらっているうちに、チャイムが鳴った。さすがにチャイムが鳴ってまでひっつく馬鹿はいないから、これで彼らは離れていった。
教科書を取り出し、教師を待った。
『綴は学校どうだ? 楽しいか?』
『楽しいよ。陸も要もいるし』
『1年生のときと変わらない?』
『変わら……ないよ?』
つい先ほどの短い会話が脳内を過ぎる。
綴からは、何かを隠しているというような雰囲気は感じられなかった。本心で、何もないと告げている。裏はない。
教師が教室に入ってきて、号令を合図に授業が始まる。
気だるい空気の流れた教室を引き締めるチョークの音。それは俺の思考をもクリアにしていく。
綴に、今現在危害が加えられる様子はない。
この間下らないいちゃもんを付けてきた男はいたが、多分あれでほとんどの生徒は懲りただろう。というか、いらない芽は摘んでいるつもりなのであれはイレギュラーな存在だったのだが。
『も……死にたい』
持っていたシャーペンの芯が折れる。パキッと鳴ったそれはすぐに見えなくなった。
綴の、悲痛な泣き声が脳裏に蘇る。
心も体ももボロボロになったあの姿で、綴が1人で泣いている。
あの時の、簡単には片付けられない憎しみと、怒りと、悲しみとが、この季節の俺にはよく現れる。それをわかっているから、俺はそれが現れてもそれに怯えることはない。
しかし、ただただ不快だ。
綴はその時の記憶に最大限蓋をした。それは簡単には出てこないだろう。
しかし、俺は当時の記憶を自由自在に引き出すことができる。第三者であったが故、に。
綴には毎年同じ質問をして、同じ答えが返ってくる。
きっともう、あの時のような悲劇は俺たちの身には起きないのだろう。少なくとも、この学園にいる間は。
それでも、綴が死を望んだ日から、俺は彼がふいに消えてしまわないかと、不安になる。
忍び寄る黒い手に引きずられないよう、俺は目の前の数式に意識を集中させた。
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