アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
微妙な距離
-
先にHRが終わったのは俺のクラスだった。
さっさと荷物を仕舞うと、陸と要に手を振って教室を出る。結局教室は隣なのだが、それでも自分が迎えに行けるというのがなんだかワクワクした。
京が教室に来てから、それまで落ち込み気味だった気分がすぐに良くなった。やはり京の力は偉大だと思う。
京の教室の中をちらりと覗く。バレないように、こっそりと。
京の席はど真ん中。席替えをしてその席だったら誰もが落ち込むような席に座っている。俺だったら視線が気になって終始俯きそうなところだが、京は堂々としていて格好いい。
別に姿勢良く座っているわけではないのだが、なんだろうかあの完成された彫刻のようなオーラは。
俺は扉から離れると窓側の壁にもたれてHRが終わるのを待った。
京はよく同じクラスになりたかったと言うけれど、俺はやっぱり違うクラスでよかったと思う。こうしてあまり見ることのないレアな京が、たまに見れるから良いのだ。
それから5分ほどでHRは終わった。ぞろぞろと教室から人が出て行く。入り口に近づいて京に視線を送るとすぐに目があった。京は急いで近づいた。
「待たせた。ごめん」
「京が謝ることじゃないよ」
ふふと笑って、俺たちは歩き出した。
夕日が彩る校舎を二人で歩くというシチュエーションはなかなか良いものだ。思えば、前に保健室から一緒に帰ったとき以来かもしれない。
「そうだ、仕事のことなんだけど」
「うん」
「今年は、間宮も綴と同じ枠で仕事するから」
そう告げられて、一瞬思考がフリーズした。しかし、すぐに別にそこまで衝撃を受けることでもないと思い直す。ここで「気まずい」とか「嫌だ」なんて思ったら、相手に対して失礼だ。
「てことは、間宮君も何か事情があるの? それとも、学級委員だから?」
「うーん、その辺は本人に聞きな。俺が言っていい事かもわからないし」
「そうだね」
生徒会室に着くと、少しだけ緊張した。間宮君はもう中にいるのだろうか。
京が躊躇いなくドアを開ける。
「こんにちはー」
「おっす」
「お疲れ様です」
「こ、こんにちは。今年もお世話になります、金扇綴です」
京の後ろから顔を出しお辞儀をすると、去年お世話になった先輩方が立ち上がって笑顔で近づいてきた。
「綴君! 今年も来てくれて嬉しいよ! 去年は大助かりだったから!」
一番にそう言ってくれたのは生徒会長の城宮先輩だった。度々京に振り回されている(全て俺関係)苦労人であるのに、俺に優しくしてくれる良い人だ。
「綴君は手際が良いし、仕事は正確だし、何より……」
城宮先輩はそこで一呼吸置くとこそっと耳打ちした。
「君がいると京の機嫌がすこぶる良い」
「会長、あんまり綴に近づかないでもらえますか」
机に荷物を置いた京がムッとしながら俺と城宮先輩を引き剥がす。
城宮先輩は「ごめんごめん」と笑いながら去っていくが、俺はなんだか少し照れくさい気持ちのままだ。
「あれ、まだ間宮は来てないんですか?」
京が城宮先輩に尋ねると、城宮先輩は微笑んで首を横に振る。そして奥の扉を指差した。
「もうあっちで仕事してるよ」
京は頷き返すと、俺の手を引いてその扉に近づいた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 569