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微妙な距離
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間宮君とはその後もいろいろな話をした。
間宮君と話してわかったのは、彼はとても場や相手を和ませるのに長けているということだ。
現に極度の人見知りと口下手な俺が、1時間後には会話を楽しんでいたし、どんよりとしていたこの別室の雰囲気が見違えるように明るくなった。
そして、俺と間宮君は意外と好きなものが共通していることもわかった。
好きな食べ物に好きな本は言うまでもなく、好きな教科と嫌いな教科まで一緒だったのだ。
最初の間宮君のイメージは完全に払拭され、とても親しみやすい可愛い後輩という感じだった。
楽しく談笑していると、コンコンと扉がノックされた。入ってきたのは京だった。
「お楽しみ中に悪いけど、もう校舎閉める時間だから上がりな」
「え、もうそんな時間」
壁にかかっている時計は21時を示そうとしている。
「綴、一緒に帰るからちょっと待ってて」
「うん」
京が生徒会室に消えていき、おれと間宮君は立ち上がって帰りの支度を始めた。
「綴先輩と話すのとても楽しくて、こんなに時間が経ってるなんて思いもしませんでした」
「俺もだよ。びっくりだよね」
クスリと笑い合う。
テーブルの上を片付けると、先に部屋を出ようとしたのは間宮君だった。俺はまだ網を仕舞っている。
「じゃあ、綴先輩、また明日もよろしくお願いします!」
「うん、よろしく」
そのまま出て行こうとして、間宮君は思い出したように振り返った。
「そうだ、僕のこと、間宮君、じゃなくて、冬樹君って呼んで下さい!」
「下の名前呼んでもいいの?」
「はい! 僕、そっちの方が嬉しいです!」
「わかった。じゃあね、冬樹君」
「はい!」
冬樹君は控えめに手を振って部屋を出て行った。入れ替わるように入ってきたのは、鞄を肩にかけた京だった。
「あ、ごめん、待ってね」
急いで網を仕舞い、鞄を持って京の元に駆け寄る。京は部屋の電気を消すと生徒会室に行き、俺もそれにならった。
「会長、お疲れ様です」
「お疲れ様です!」
「はーい、また明日もよろしくねー」
会長が優しげな笑みを浮かべて手を振ってくれるので、俺も会釈をして返す。
生徒会室を出てからの京の第一声はこれだった。
「なんか、間宮と仲良さげだったな」
「え」
「楽しそうな声がこっちにまで聞こえてた」
少し拗ねたような声音。顔を見ると、暗い中、かろうじてそっぽを向く京が見て取れた。
「ふふ、嫉妬した?」
「嫉妬?」
「後輩相手なのに、なんでかね」
「……いや、これは嫉妬なのかな」
京の顔はいつになく真剣だった。このとき、それをただ可愛いなんて思っていた俺は、この後に起こる事態の兆候に一つも気がついていなかった。
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