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裏
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それからというもの、冬樹君は生徒会でなくても度々話しかけてくれるようになった。
校舎ですれ違うと挨拶をしてくれるし、お互いに時間があれば会話もする。
冬樹君は愛想が良くて、陸や要ともすぐに顔見知りくらいになっていた。
冬樹君の笑顔は相手をも笑顔にしてしまうものだった。
『え、明日も一緒に食べれないのか?』
「うん、ごめん……」
『そっか』
京の、あからさまに落ち込んだ声が電話越しに聞こえる。
寮は消灯時間を過ぎて、もう各部屋を行き来することができない。京はよく俺の部屋に泊まって規則を破るが、流石に消灯時間を過ぎてから部屋を抜け出すことはない。
「冬樹君からのお誘い、もう何回も断ってるから、少しは受けないと失礼かな、って」
『そういう考えで相手といるのもどうかと思うけど』
「ゔ」
それは最もだ。これでは俺が嫌々冬樹君といるみたいになるのだから。
しかし、そうではなくて、やはり京と冬樹君を天秤にかけると圧倒的に京と一緒にいたいのだ。冬樹君が嫌いとか面倒とかではなく、京が好きすぎるのだ。
京とはいつでも一緒にいられるが、冬樹君とは体育祭が終われば関わりがなくなる。だから、それまでの間だけ一緒にいようと思った。
『まぁ、綴がそういうの断るの苦手だって知ってるから、しょうがないとは思うんだけど……』
「? なに?」
突然何か考え込むように黙った京を訝しむ。
『間宮さ、良い奴だとは思うんだけど、何か、裏があるような気がするんだ』
「は? 裏?」
『うん。だって、俺といるときの間宮と綴と一緒にいるときの間宮、全然違う』
「そうなの?」
それは初耳だ。学食での記憶を思い起こすが、あのときの冬樹君と俺の前での冬樹君、何かが違っているとは思えない。
「気のせいじゃない?」
『気のせい……かな』
それでも京は渋った。しかし、今ここで話していてもどれが真実かなんてわからない。冬樹君に聞いたわけでもあるまいし。
『まぁ、俺の思い過ごしならいいんだけど。綴、用心に越したことはないからな』
「はいはい、おやすみ」
『おやすみ』
通話が切れて、その画面をしばし見つめた後俺はアラームをセットして枕の横に置いた。
ベッドサイドのランプを消してベッドに潜り込む。
京は考えすぎなんだって。あ、でも、確かに俺も冬樹君のことよく知らないとき結構警戒してたかも。
「用心って……何を気をつければいいんだよ」
気をつけようがないじゃん。そう思うが、チラと浮かぶのは中庭での冷たい視線やたまに見える俺を見透かすような目つき。
あれらに深い意味は無い。だって、冬樹君はとても良い子だから。
掛け布団を顎まで引き上げると、俺は目を閉じた。
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