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悪夢
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体に伝わる振動が俺を目覚めさせた。
「綴、もう下校時間だから帰ろう」
「京……」
「荷物は持ってきた」
京は俺の背中を支えながら抱き起こしてくれた。少し目眩があるが、どうにか立ち上がる。
「先生、ありがとうございました」
「いえいえ。金扇君、お大事にね」
京が挨拶し、俺は軽く会釈した。
日が長くなっているからだろう、廊下はまだ明るかった。オレンジに染まる廊下の節々から、まだ校内に残って活動している生徒の音が聞こえた。
「あれ、京は今日生徒会は?」
「今日は休み。会長も休みで良いって言ってくれたし」
「……ごめん、俺のせいだよね」
体育祭が近いというのに、俺の体調不良のせいで人員を割いてしまっている。
「今からでも、生徒会行った方がよくない?」
「綴を一人で帰らせるわけにはいかない」
「それ意味わかんないし。すぐそこだから大丈夫」
「全然大丈夫な顔じゃないだろ!!」
それまで静かだった京が突然大声を出した。そしてから、ばつが悪そうに顔を歪める。
廊下で立ち止まり、京は俺の目を見つめた。
そこに映る俺は、なんて憐れなのだろう。
何もかもに怯えたように体を震わせる自分が、心底憎かった。
「今なら、綴よりも綴のことわかってる自信がある。だから、綴が全然大丈夫じゃないってこともわかる。頼むから、今日は大人しく一緒に帰ってくれよ」
京が俺の手を取った。京の手もまた震えていることに気がついた俺は、黙って京にもたれた。
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