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金扇屋の陰間達
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「俺よりもさ、綴の方が心配なんだけど」
「俺?」
京はコクリと頷いた。
「先月休んだとはいえ、今日と明日仕事で、明後日は稽古に行って帰ってくるんだろ? 結構ハードじゃない?」
京が心底心配そうな顔をしているので、俺は思わず笑ってしまった。京は不満そうな顔をしたが、俺は「大丈夫」と続ける。
「確かに大変だけど、俺はこの仕事が好きだから。これでも結構楽しみなんだよ」
小学校を卒業してすぐ陰間になり、働き始めてもう6年目になる。
俺が高校進学をすると聞き、仕事が激減することを惜しんでくれるお客さんは多かった。あそこは俺の数少ない人との出会いの場で、自分を魅せることのできる場所なのだ。
京はそれを聞くと、安心したようにこくりと頷いた。
「こんなに張り切ってるなら、俺も予約の一つ入れておけばよかったな」
「ダメだよ。京が入れると、その日一日京の相手しなきゃいけないもん」
「なっ、俺との時間がそんなに嫌……?」
地味にダメージを受けたのか、どことなく京が老けてみえる。
「そうじゃないよ!? そうじゃないから早くイケメンに戻って!」
わしゃわしゃと髪をかき混ぜてやると、髪はボサボサになったがどうにか顔は若返った。
「お父さん、京が予約入れると一番に優先してくれるんだ。俺に来てる指名全部蹴ってさ」
「そうだった、綴は売り上げナンバーワンの売れっ子だった」
「その言い方やめてください……だから、京との時間も凄く大切で楽しいんだけど、他のお客さんとの時間が取れなくて。お家的には良くないかなって」
「なるほど。花街ってのも大変だな」
「ごめん、こんなこと話して。京の家だって、大切なお客さんなのに」
俯きがちになった俺の顔を前に戻してくれたのはやはり京だった。柔らかく微笑み、気にすることはないと首を振る。
「俺はたまーにあっちでの綴を見られるだけでいいんだ。だから、先に言っとく。夏休み中に一件予約入れるから、そのつもりで」
「……!うん!」
目前には、この箱庭の出口が開けていた。
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