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「可哀想」な子供
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花街での生活も最終日、目覚めて一番に感じたのは頭痛だった。不快感に眉を顰め頭を抑える。
意外と疲れは溜まっていたようだ。この間倒れた時もそうだったが、自分は自分が疲れていることに気がつきにくい質なのだと思う。
思えば、爽快な気分で帰ってきた修学旅行の次の日や、やりきったと清々しい気持ちで迎えた文化祭の次の日は決まって熱を出してきた。
疲れていないと思っても、無理にでも休んだほうが良いのかもしれない。
頭痛薬を飲んで稽古に行き、そこまで悪化しなかったことに安堵した。
あとは、花鶏との約束を果たすだけだ。
花鶏を呼んだのは、金扇屋2階の俺の部屋の隣だった。そこは12畳の和室で、自分の部屋ではないのだが実質自分の部屋の自由に使えた。
花鶏は真剣な表情で俺と向かい合い、教えを請うた。俺の助言をメモに書き記し、俺の言葉の何も聞き漏らすまいとしていた。
最初に俺が舞ってから、花鶏に舞わせ、直した方がいいところを告げていく。
しかし、花鶏は自主練をしなくても良いレベルの舞い手であると思う。
基礎がしっかりしているので、一言告げれば一発で直すことができるし、対応も飲み込みも早い。
真面目すぎて心配になるほどだ。
「このくらいかな……。あとは全然問題ないと思うよ」
「ありがとうございます、柊兄様」
花鶏は礼儀正しく深々とお辞儀をした。
「……花鶏は本当に礼儀正しいね。兄弟の中でも珍しいよ」
「そうでしょうか、これが当たり前だと思っていますが」
「鶴とかは、もっと気楽でしょ?」
鶴を例に出すと、花鶏は「あぁ」と納得していた。
「鶴は礼儀を知らなすぎなんです。 椿兄様や空木兄様にあんなに言い返せるなんて……」
あれには側で見ている花鶏も感服らしい。
クスクスと笑ってから、部屋はしんと静まった。
俺は花鶏とそこまで親しくない。それこそ、兄弟という関係性以上になったことなどない。
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