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後ろ向きと君の覚悟
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夕方に一息ついていると、京が唐突に提案した。
「厩舎行こうよ、もう外も涼しいし」
「あっ、行きたい!」
その言葉一つで俺たちは立ち上がり、渡り廊下から離れに向かった。
厩舎は家の敷地の奥にある。わざわざ表玄関から行くよりも、離れから外に出た方が早い。
普通の家に厩舎など無いだろうと思うが、あいにく京の家は普通ではない。この家では馬を3頭飼育しており、それぞれ京の両親と京のものだ。
綺麗に掃除され臭いがほとんどしない厩舎には、茶色い馬、白い馬、黒い馬がいた。京の愛馬は黒い馬でメスのフォリアだ。温厚な性格で飼い主に忠実。
「フォリア、久しぶり」
そう言いながら京が顔をすり寄せると、それがわかるようにフォリアもグルルと鳴いて京の肩に頭を置くようにした。
「相変わらずお前は可愛いなぁ」
そしてフォリアは京を猫撫で声にさせる貴重な逸材だ。
相思相愛な2人を引き裂く訳にもいかず他の2頭を眺める。2頭は少しだけ寂しそうにこちらを見ており、なんだかそのつぶらな瞳に胸が打たれた。
京の両親も多忙な人で、きっとここには普段飼育係くらいしか訪れないのだろう。
そう思うと不憫になり、俺は2頭に近づいて話しかけた。
「寂しいよね。ここはとても狭いし、外で歩きたいよね」
どうにか連れ出したいが、俺には馬を操る技術など無いし、この2頭は京の両親のものだ。勝手なことをしてはみんなが悲しむ。
「……その馬達は乗馬はできないけど、外の牧草地で自由にさせることならできるよ。今日はもう遅いから無理だけどな」
後ろからそう話しかけた京は、俺にヘルメットを渡した。
「歩かせてもいいの?」
京は2頭に向き直った。
「あぁ。まぁ、運動不足にならないように日頃そういうのはされてるだろうけど、この子らも綴がいればいつもより楽しそうだしさ」
そう言って馬達に野菜を与え、京は俺の手を引いて厩舎を出た。
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