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高支那はどこへ…
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部屋を飛び出したタケルは、ただただ走った。
城の石造りの廊下は等間隔で風の通る小窓があり、満月の月明かりが差し込み明るい。
そこを一気に駆け抜けると、内部は迷路のような造りの狭い通路が続く。
所々ランプが灯り、走るに困ることはなかったが、タケルにはもう方向感覚が掴めなかった。
入り組んだ通路をただ当てもなく走る。
「高支那!!」
タケルは叫んだ。
高支那に聞こえるように。
どこかにいるはずの高支那に届くように――。
冷たい風が城の中を吹き抜けるが、寒さを感じる余裕はなかった。
「高支那、どこにいるんだ!!」
何度もその名を呼ぶ。
だが、薄暗い城内、どんなに叫んでもタケルの声だけが虚しく響くのだった。
たまらず足を止めてしまうタケル。
自分の荒い息づかいしか聞こえない静まり返った空間に耳を澄ます。
すると――
すぐ背後から、コツン…と靴音がした。
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