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キスと仲直りと*
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こんなことするのっておかしいのかな…
だって、ここはキッチンだ。昨日、星(あかり)に襲われた場所。
俺が何となくそっちに持って行ったら星(あかり)はもう分かってるみたいに瞳を閉じた。
キスをしながら星(あかり)の、シンクと身体との間にできた隙間から片腕を差し込んで背中を支えた。
タダでやってるわけじゃない。
ぐっとこちらに引き寄せて隙間ひとつないくらい密着した。
「………!」
驚いたみたいな反応……、ヤバい。すごく楽しい……
角度を変えるため少しだけ唇を離し、もう一度重ねる。ついでに星(あかり)越し、向こう側のソファーに目線を向けた。
パパ、…起きてないよな…
……確認は大事だ…。
もう片方の腕を、いかにもキツそうにカラダの隙間に差し込んで脇腹の下からシャツの裾をまくりながら中に手を入れてしまう。
生身の肌をわざと強めに押して、張力で戻るのを感じながら少しずつなで上げていき、親指の先を乳首の先にちょっと触れた。
「ふ…、っん…っ…」
星(あかり)の、鼻から抜ける甘い声…、少し上ずってた。気持ちいいのかもしれない。
俺は舌先で星(あかり)の唇の形をトレースするみたいになぞってまた唇を重ねた。
何度も何度も離しては口付けする。少しずつ、気持ちが高まっていく……。
星(あかり)のまつ毛が震え、薄目で俺を見て来るのが色っぽい…。
涙目なのか、うるうるしてた。
最初のうち、キスだけするつもりだったけど、俺はもうここで星(あかり)と…、そう……したくなって…、
唇を離して、はぁっ、とため息をついた。
星(あかり)の背中に添えた腕をぎゅっと自分に引き寄せたら、隙間なく密着して耳もとに唇を寄せた。
「……ね…2階行く…?星(あかり)…」
…んー……さすがにあからさますぎだよね…
…ひねりも何もないし……
星(あかり)の顔はかっと赤くなった。
やっぱり分かりやすいよね…
自分がノープランすぎてあきれる…。
星(あかり)は真っ赤になったまま固まってた。反応がないので諦めかけたそのとき、
「んー……」
リビングのソファーからパパが起き上がって大きく伸びをしているのが見え、咄嗟に星(あかり)を強く引き剥がした。
バッ……!!……!!
「ぅあ痛っ…!!」
「アッ、ごっ、ごめん…っ…!!」
勢いよく離したせいで、星(あかり)の腰と背中の真ん中あたりがシンクの角に思い切りぶつかってしまった、
俺は即座に謝った。すると星(あかり)はちょっぴり痛そうに眉をしかめつつ、
「俺は大丈夫」
声を立てずに唇をササッと動かした。俺を安心させようとしてニコッと笑うけど、背中と腰のところを片手でさすっている。
「…ごめんね、」
もう一度謝ると星(あかり)は『いいから…』とまた唇を動かし、リビングの向こうにチラリと目線を送った。
察した俺は何気ないふうを装って、まだ寝ぼけてるらしくソファーでぼーっとしてるパパに声をかけた。
「パパ…?起きた…?」
キッチンを星(あかり)に任せてナチュラルにソファーに近付くと、パパはソファーに座って俺を見上げ、
「んー。…星(あかり)は…?」
と言った。
「朝ご飯のお皿洗ってくれてるよ。
…パパ、まだ寝てなくていいの…?昨日から疲れてるんでしょ」
そう言うとパパはうん、と頷いた。俺の首もとに貼ってあるガーゼの橋をチョンチョンつついて、
「…傷、見せてくれる?」
と言うのでん、と顎を上げて促すと、パパはガーゼをゆっくり剥がして傷を見た。
「………これ、昨日星(あかり)に噛まれたんだ…?」
「…うん…」
パパは指先で少し押して
「痛い?」
心配そうに聞いてきた。
本当はもう痛くなかったけど俺は
「…うん…」
と答えた。
……ジャーーーー………
キッチンの方から、水を流す音とか、カチャカチャ、パシャパシャ、…軽い破裂音や水はねの音が聞こえてくる。
星(あかり)がお皿を洗っている音…。
パパはキッチンの方に目を向けて言った。
「梓、……昨日の夜は、その…、ごめんね…。
ママのことも、星(あかり)のことも、いつかちゃんと話さなきゃいけないと思っていたんだけど…」
「………」
俺は黙っていた。パパは俺の顔をじっと見つめてからまた口を開いた。
「星(あかり)は……今後、何度も血を求めると思う…、
……でもね」
いったんそこで話を切ったパパは俺の首のガーゼを元に戻しながら
「"梓は『絶対あきらめない』って約束して。
パパ、星(あかり)が、……ウィルスにかかってるみんなが治るように仕事頑張るからさ。
だからそのあいだ、梓はあきらめずに星(あかり)の側にいてあげてくれないかな……"」
星(あかり)に容易に聞こえるのを避けるためか、パパは母国語で伝えてきた。
真剣な表情と、…ないまぜになった、少し悲しそうな表情…
言ってることは前向きなのに、……何でそんな顔をしてるの…?
聞きたかったけど、呑み込んだ。
俺はパパが本当は泣き虫なのを知ってる。
多分、この言葉の裏側はママのこともきっと関係してる。
登山中に吸血鬼に襲われて亡くなった、ママの本当の両親…
そしてウィルスの研究に没頭し過ぎた挙句発症…、死んでしまったママ、…そして双子の赤ちゃんたち…
これらを考え合わせたとき、恐らく俺か星(あかり)が、…まぁおおかた、俺だろうけど……、死んじゃう可能性もある…ってことなんだろう……
それでも星(あかり)と一緒にいるのを望むのは、きっと何か、見込みがあるから。
いや、見込みなんかなくてもここは頷いておこう。素直にそう思った。
「"分かった。……あと、俺も…ごめんなさい。パパに昨日、あんな口きいて…"」
「"………ん?"」
「"…ママは……パパを愛してたんだよね…?
だって、血が美味しいって言ったんでしょ…?
…美味しいって言ったってことは、そうゆーことなんだよね…?
そうだよね?パパ……"」
「"……おいで"」
ソファーに座ってるパパが手招くのに従って、覆い被さるように抱き着いた。
パパのしっかりした大柄な肩に顔を埋めると、パパは大きな手で背中をポンポンしてきた。
小さい頃からこうして抱き締めてもらうのが好きだった。
何かあったらすぐ泣き付いて、そうしたらパパは自分も泣き虫なくせに俺にはいつだって I love you、大丈夫、って……
変わらない。
あったかい。
このとき俺は中1だった。
ずいぶん昔のことに思えるけど、まだ5年も経っていない…。
---
(続く)
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