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「眠れない…」
パチリと目が覚めたあと、小さく呟いた。
トランプではしゃぎ過ぎた結果、疲れてぐっすり寝てしまった体は、まだ夜中だと言うのに覚醒してしまった。
二度寝したいのは山々だが、ちっとも眠くない。
真っ暗の中周りを見渡しても、やはりみんな寝息を立てて寝ていた。鈴木だけいびきだけど。
はぁ、と一人溜め息をつく。
ここは山にある宿泊施設の為夜は冷えるのだろう、ブルリと身震いをした。
そうすれば何だかトイレに行きたくなって、みんなを起こさないようそろりと布団から抜け出した。
無事布団を抜けたあと、襖から頭だけ出して廊下を確認する。
一応夜は部屋から出るの禁止だし、見回りの先生がいないか見とかないと。
バレて斉藤先生みたいに迷惑かけたら嫌だしね。
キョロキョロと見渡してみるが人の気配はない。
よし、と部屋から出ると足音を立てないようにトイレへと向かった。
用を足したあと、今日の朝も来た洗面台で手を洗う。
先生の姿を思い出してしまって何とも言えない気持ちになったが、かき消すようにブンブンと首を振った。
持ってきたハンカチで手を拭き、ふぅと一つ息を吐く。
「…寝れる気がしない」
俺の特技、早寝早起き朝ご飯。
何がなんでも起きるのが早すぎたが、一度起きたら眠れない。
今まで得してきた健康児の被害がここに出るとは。
羊でも数えてたらいいのかなぁ。
抱き枕があれば二度寝できそうなのに。
一向に眠気が来ないまま、また部屋へと歩き出した。
「寝かしつけてやろうか?」
「えっ!?……んん」
突然現れた先生に驚いて大きい声が出てしまった。
慌てて抑えたが他の人に聞こえてないだろうか。
くく、と他人事のように喉を鳴らして笑う先生をじとりと睨む。
「何か人の気配がするなーと思ったらお前だった。見回りが俺で良かったな」
「そうですけど…先生こんな時間まで?」
「お前みたいに出歩くヤツもいるからな。ま、もうすぐ寝るとこだったけど」
そう言われると俺が悪いみたいじゃないか。
いや実際悪いんだけど。
斉藤先生の時も思ったが、教師というものは相変わらず大変な職業だ。
俺は絶対無理だなと思い一人苦笑した。
「それで、どうするの?」
「えっ…?」
「寝かしつけてやろうか、って。俺の部屋で」
まあ、寝かせてくれるのなら万々歳なのだが。
にこりと微笑む先生に嫌な予感がするのは気の所為だろうか。
結局部屋に戻っても寝れそうにないので、今回は素直について行くことにした。
何かされそうになったら逃げよっと。
パチッと電気をつけてもらって先生の部屋に入ると、俺たちの部屋とはまた違う造りだ。
一人部屋だからだろうけれど、それでも十分な広さがある。
俺たちの部屋にはない窓から星空が見え、て俺は思わず駆け寄った。
「わっ、綺麗…」
雲がない真っ黒な夜空には見た事のある星座が並んでいる。
自然を感じているみたいで素直に楽しい。
キラキラと輝く光はなんだかいつもと違って見えた。
「寝るんじゃないの?」
「ほわっ」
後ろから急に抱き締まられ、びくんと体が跳ねる。
俺の腕ごと包み込むように先生の腕が回って、首元に頭を擦り付けられると擽ったい。
甘えるような仕草に自然と顔が緩んだ。
「寝ます、けど…今はまだ眠くないから」
「それは明日が楽しみすぎて、みたいな理由?」
ふっ、と笑いながら訊ねる先生にムッと頬を膨らませる。
今絶対俺の事馬鹿にした。
多分五歳児ぐらいに思われている。
「家じゃ抱き枕使ってるから、足りなくて眠れないんです」
「…お前本当抱きつくの好きだな」
そんな先生の言葉に俺は疑問を抱く。
抱きつくのが好きって、それは俺じゃなくて先生だと思うんだけど。
確かにぎゅーってするのは好きだけど、俺から先生にしたことはないはず。
変なのーと思いながら、先生の腕を軽く握った。
「あれ、それじゃあ昨日はどうしたの?朝ぐっすり眠れたとか言ってたと思うけど」
「あー、昨日は亜太がいたから大丈夫だったんだと思います」
「…それどういうこと?」
急に先生の声が低くなり、驚きに肩が揺れる。
ぎゅっと抱き締める力が強くなったかと思うと、背筋がヒヤリとした。
明らかに怒ってるよね…?
でもどこに怒る要素があったのか全く分からない。
とりあえず俺は先生の様子を見ながら話を続けた。
「亜太が抱き枕の代わりで、その、抱きついて寝て……ました」
ふとガラスに反射した先生の顔をみてぎょっとした。
見たことの無い鋭い眼光でガラス越しの俺を見ている。
それなのに口元は笑っているものだから恐ろしくて仕方ない。
何っ!?こわっ、怖い!
そんな目でこっち見ないで欲しい…
焦った俺は、先生を見ないように咄嗟に下を向いた。
「ねぇ、穂中…」
ゾワリと鳥肌が立つような冷たい声に驚く。
先生の顔が俺の耳元に近づくと、フッと息をかけられた。
「――先生とイイことしよっか」
そんなの、絶対俺にとってイイことじゃない。
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