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不快
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仕事を終え寮へ帰るとそこには相方であるナンバーと、見知らぬ若い女性がいた。
ナンバーと同じくらいの歳だろうか。
「誰ですか、その人」
「あ、アカネ!おかえり!」
自分に作り笑顔を見せた後、女性に近づき声をかける、
明らかに動揺しているナンバー。
「とにかく、もう用は済んだでしょ、帰って」
「あー、はいはいごめんね、邪魔したね」
へらへらと笑っている。
一方ナンバーは暗い声で急かす。
「はやく出てって」
早口でそう言いながら窓の方に追いやる。
「じゃ、またね、な…じゃなかった、ナンバー♡」
彼女はそう言ってウインクしながら手を振り、窓から飛び降りて行った。
溜息をつくナンバー。
「あの、誰なんですかあの人」
「あっ、いや、ただの知り合いだよ」
「なんの用があったんですか」
「…ごめん、それは…言えないんだ」
なんでそんな、悲しそうな表情をするんだ。
「こちらこそすいません、詮索しようとして」
「ううん、あ、夜食作るね、アカネは向こうで待ってて」
そうだ、無駄な詮索は良くない。
彼も気を使って自分の過去を深く訊かないでくれているではないか。
そうは分かっていても、明らかに動揺していた彼といい、やけに彼に馴れ馴れしい態度のあの女性といい、気にかかる。
そもそも正式な手続きもせずいきなり部屋に入ってきているなんて、一体何者なんだ。
そんなことを考えていたら、キッチンの方から芳ばしい香りが。
「できたよ」
今日は焼きおにぎりか。
ナンバーと同室になる前までは食事は栄養を摂るためにするもの、倒れないようにするためのもので、必要最低限の栄養食(ゼリー状のアレ)で済ませることがほとんどだった。
しかし、彼と一緒になってからは彼がよくご飯を作ってくれるため、普通の人間らしいご飯を食べるようになった。
初めて彼がご飯を作ってくれた時は、久々に口にしたちゃんとした料理だったというのもあるかもしれないが、あまりの美味しさに感動した。
「アカネ?早く食べないと冷めちゃうよ」
「あ、ありがとうございます」
彼が差し出した焼きおにぎりをひとつ貰って食べた。
相変わらず、美味しい。
味覚が異常に鋭いのも料理が上手い要因のひとつなのかもしれないな。
自分が前より少し人間らしい生活をしていることに多少の違和感を覚えながら、その後シャワーを済ませ自分のベッドに入った。
しかしすぐに眠りにつけなかった。
あの女性…
どういう関係なのだろうか。
ただの知り合い、と言っていたが、やけに馴れ馴れしい態度だった。
幼なじみか、友人か、もしかして恋人?元、という可能性もあるか。
恋人…
吐き気がしてきた。
余計なことばかり考えるのはやめよう。
……声?
何かの声が聞こえる。
「…うぅ…あ…あ、うあぁ…」
既に寝たはずの彼の声だった。
彼のベッドの方を覗く。
またあの“呪い”が出てくるんじゃないだろうな…
念のため様子を見ておこうか。
掛け布団をめくると、冷や汗をかきながらうなされている彼の顔が見えた。
ストレス…溜まっているのだろうか。
彼に言われた言葉を思い出す。
また出てこられても面倒だ。
掛け布団の上から彼の背中側に沿うようにして寝転がる。
こんな状態を“ハグ”と呼べるのかは微妙だが、何もしないよりはマシだろう。
布団越しでも彼の暖かさが感じられる。
何故だか落ち着く匂い。
やはり彼の隣は…とても安心してしまう。
さっきまでの吐き気がだんだんと消えていく。
危ない、ここで寝てしまうところだった。
彼も少しは楽になったのだろうか、先程の苦しそうな表情が和らいだように見える。
引き出しからハンドタオルを取り出し、彼の汗を軽く拭いて布団を掛け直した。
その後自分のベッドに戻りすぐに眠りについた。
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