アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
今夜はゆっくり休めなそうだ
-
「ナンバーさん、起きてください」
「…んん……」
「そろそろ起きてください、時間ですよ」
「………ねむーい…」
そう言って彼はもう一度布団をかぶる。
やれやれ。
「……はぁ、朝食、何にしますか」
「え!!?アカネが作ってくれるの!?」
十分元気じゃないか、心配して損した。
「……朝食、いらないんですか」
「いるいる!冷蔵庫に卵とかあるから適当に焼いてくれる?」
「分かりました、味付けは?」
「醤油!」
やけに嬉しそうにしている……、
眠かったんじゃないのか。
あまり得意ではないが、一度作ると言ってしまったし仕方ない。
「…はい、できましたよ」
「わーい、いただきます」
少しの沈黙。
「うん…美味しい!変わった味の…スクランブルエッグだね」
「…玉子焼き、ですけど」
「…あ、確かに玉子焼きとも言うよね!」
そう必死にフォローされると逆に心が痛む……。
朝の食堂の監視。
監視と言っても、少しでも不審な動きがあればナンバーが簡単に捉えてしまうので自分はあまり気を張る必要はない。
気になっていたことを、尋ねてみようか。
言いたくないことならば、言わないだろうし。
「…あの」
「ん?なぁに?」
「…ずっと、休日はいないんですか」
「うーん、しばらくはね」
「無理、しないでくださいね」
「ありがと」
ひみつ、と言っていたし、これ以上は聞けなかった。
「かんしゅさん」
食べ終えた食事のプレートを持ったまま声をかけてきたのは金髪に褐色の肌、反転目を持つ囚人のべーた。
「べーたくんの、ごはんがナいです」
「食べ終わったならプレートは…あそこに戻すんだよ」
「たべおワってない…」
「え…?」
「べーたくんは、ごはんたべてナい」
プレートに食事がのっていた形跡はある。
しかし食べ物は綺麗さっぱりなくなっている。
本人が食べたわけではない…?
彼は…嘘をつくタイプではないのは知っている。
勘違いや思い違いという可能性はあるが……
「食べてないのに、ご飯がないってこと?」
「うるサいの、ぶんぶん払ってたら、なくナってた」
幻覚?それとも他の囚人に食べられてしまった…とか?
「誰かに取られた?」
「おなかすいタ……」
そんな寂しそうな顔をされても困る…。
「申し訳ないけど、もう1回ご飯をあげるわけにはいかないんだ…」
「だメ?」
「お昼まで、我慢してください」
「だめナの…」
しょんぼりとした顔をしながら戻っていく。
「どう思いますか」
「うーん、幻覚か何かに気を取られてるうちに誰かに食べられたんじゃない?」
「まあ、彼は周りが見えてないことも多いですしね…」
その日は、その後他に不審なことが起こることも無く一日が終わった
と思っていたが。
午後8時
一日の業務が全て終わりナンバーが夕飯を作ってくれているところだった。
部屋の扉をノックする音が。
「はい」
扉を開けると、黒いショートヘアーに深い青緑色の帽子を被っている女性、名前は、林 凛。
主に事務を担当している看守だ。
「突然、すみません…」
「あっ、凛さん、どうしたんですか?」
「ちょっと事件があって……看守長から伝言です。
お二人とも、ご飯済ませてからでいいですが、
なるべく早く、食堂前に来てください…とのことです。」
「分かりました…
わざわざありがとうございます」
「いえ、お疲れのところ大変ですね…
それでは、私はこれで失礼します」
「お疲れ様です」
「ナンバーさん」
「聞いてたー!急いで作るね〜」
今夜はゆっくり休めなそうだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 26