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修行
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「ナンバーさん…朝ですよ、起きられますか」
ルームメイトの声で目が覚める。
「…ん、……おはよ、アカネ」
寝ぼけたままの声で返事をする。
「…あの、体は大丈夫ですか」
少し掠れた声で、彼は尋ねてきた。
彼を不安にさせてしまった罪悪感に襲われるが、それでも彼自身が傷付くよりは100倍マシだと思える。
「うん、心配かけてごめんね」
やられたのが休み明け1日目で良かったと思う。
師匠にかけられた能力がまだ完全には解けていなかったボクの身体は、回復力が常人とは比べ物にならないくらい上がっていたおかげで、一晩であの傷をほぼ完治させた。もちろん、りんりんの手当が完璧だったというのもあるけど。
10日前のこと。
ボクは力をつけるために、8年前にボクを拾って面倒を見てくれた師匠の元へ向かった。
ボクの元師匠、名はアルキメデス、ボクはアルスと呼んでいる。
アルキメデスとは偽名らしく、公には死んだことになっているから偽名を名乗っているのだと言う。
本名はボクも知らない。
彼は彼の能力、「時間操作」によって彼自身の体の時間を少しづつ戻し続けて若さを保っていて、本当は150年ほど生きているらしい。
そして彼は香涙と血縁関係にあるらしい。
香涙もアルスが生きていることは知らないらしいので香涙にはボクがアルスの知り合いであることを話してはいない。
アルスの血縁なのだからきっと香涙は強いのだろうと思っていたが、昨日の騒動でそれがはっきりと証明された。
ボクはアルスの元へ行き修行をつけて欲しいと頼んだ。
「というわけで、修行をつけて欲しい」
「うーん、ムリ!」
軽っ…。
「なんで!?アルスは強いでしょ?」
「俺は、生きていくための力をつけてやることはできたけど、戦いの力をつけてやることはできないんだよ、専門外だから」
「えぇ…」
「それに、毎回半日かけてここまで来るのは時間がもったいないだろ?
だからもっと戦いに詳しい人を紹介してやる
ナンバーの刑務所からそう遠くない場所に住んでるからちょうど良いよ」
「えー、まぁ修行つけてくれるなら誰でもいいけど…」
「café de misty って店のオーナーをやってる
ゆるふわ金髪の外国人の少女だ、
住所は…スマホに録音しとくか」
ゆるふわ金髪、外国人少女.......?
なんだか不安になってきた。
「.....ありがと」
「じゃ、元気でな
ま、せいぜい頑張れよ?」
「あぁ、うん
あのガラクタもう送ってこなくていいからね」
「ガラクタじゃねぇ…お土産だ〜」
手をひらひらと振る。
ボクも同じように返して去った。
その後、アルスに言われた通りの住所へ向かうと、言っていた通りのカフェらしき建物があった。
カラン、と扉の小さな鐘が音を鳴らすと同時に、珈琲の良い香りに包まれる。
「いらっしゃいませ」
あまりにも美味しい香りがするので要件を忘れて普通にお茶してしまいそうになるのを必死にこらえて、案内の女性に話を切り出した。
「あ、あの、ここのオーナーさんに用があって…アルス、じゃなかった、アルキメデスって人の紹介なんだけど」
「話は伺っております。こちらへどうぞ」
案内された先は、階段を2階ほど降りた広い部屋。
先程までの珈琲の香り、歩く度に心地よく聞こえる木と自分の靴が擦れる音、そんな良い雰囲気とはまるで違い、冷たく、重たい、コンクリートで囲まれた部屋だ。
もしかしたら駐車場かなにかだったのかもしれない。
奥から彼女は現れた。
「あら…かわいらしい坊やね
ワタシとお茶でもいかがかしら?」
落ち着いてはいるがそれは間違いなく少女の声だった。
この人が本当に修行をつけてくれる人なのか…?
「いや、お茶じゃなくて、アルスの紹介で…修行をつけてもらいに来たんだけど…」
「あら、アナタがナンバーくんかしら?
生意気でかわいくないガキだと聞いていたのだけれど…全然違ったわね」
「…アルス………」
「まあいいわ、初めまして
ワタシはアンテミスと申します。
アンとお呼びくださいな。」
「よろしく、お願いします、アンさん」
「よろしく、ナンバー。アンでいいわよ。
さっそくだけれどこれから実力testをするから、堅苦しいのはナシにして」
そう言いながらじわりと歩み寄ってくる。
「ワタシを殺す気でかかってきなさい。
ワタシも、アナタを殺す気で攻撃します。」
冷たく鋭い声色でそう言った。
その日から修行が始まった。
物語の中で見たような修行は、物語で見ていた時に想像したものとは比べ物にならないほど厳しく…
厳しいなんて言葉で表すことすら正しくない気がする、
これは、地獄と言うべきか、
とにかく、生きた心地がしなかった。
今まで生きている実感があったのかと問われたらそんなことは無いのだが。
攻撃すると言われ戸惑っていると、部屋全体が霧に包まれた。
その後すぐにアンの凄まじい攻撃、殴る蹴るなどのシンプルな攻撃を何度も受け、圧倒的な力の差で何度も致命傷を負わされた。
しかしボクは死ななかった。
致命傷レベルの傷を負っても、なぜかすぐに治り回復するのだ。
これが地獄だった。
傷を負っては回復し、またすぐに攻撃される。
ボクからしたら、死んでは生き返りを繰り返してる気分だった。
だから、生きた心地がしなかった。
後に聞いた話だと、最初あびた霧に自己治癒力を大幅に高める効果があったらしい。
今回、大量のパンダに噛みつかれて大量の出血をしても一晩で回復したのはこの霧の効果がまだ完全に消えていなかったからだと思う。
彼女は霧を操る超能力者で、詳しくは聞かされていないが他にもいろいろな霧を扱えるらしい。
「はい、とりあえず実力testは終了…
アナタ、なぜ力が欲しいの?」
あまり話したくはないが、アルスからの紹介だ、既に聞いているかもしれないし、変に隠し事をするのは良くないだろう。
「魔術師に、命を狙われてるから
それと、この眼に宿る呪いに体を乗っ取られることがあって…ボクが弱いことが原因らしいんだ」
それと、もう一つ、守られてばかりではなく守れる力を。
「そう……
残念ながら、アナタの強さは一般人レベル
魔術師って言っても様々いるけれど…まあ今のアナタでは相手にすらならないでしょうね…
アナタの眼の力は、遠くから狙われた時なんかは察知できて便利かもしれないけれど、さっきのような1対1の近距離戦になった時にそこまで役に立たない。
なぜならアナタ自身の反応速度が追いついていないから。
呪いについてはわからないけれど…
まずは基礎的な運動能力を身につけてもらう必要がありそうね。
ナンバー、厳しい修行を受ける覚悟はある?」
「はい」
「…フフ、素直で良い子ね」
先程までとは違い柔らかい声でそう言った。
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