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失踪?
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彼がいなくなった。
午前3時、こんな時間に外に出るなんて普通ではない。
また呪いに乗っ取られてしまっていたら……
不安がよぎるが、もしそうだとしたら考えている暇はない、早く見つけなくては。
刑務所の周辺を駆け回り、彼の名を叫ぶ。
この際テレポートも惜しみなく使う。
乗っ取られていたらまた戦闘になるかもしれないなんて、考えている余裕はなかった。
いない。
見つからない。
嫌なことばかり、考えなくてもいいことばかりが頭に浮かんで頭がグラグラする。
吐き気がする。
負けじと走る。
叫ぶ。
見つからなければ、見つからないほど
身体がおかしくなっていく。
手足が震えて、上手く走れない。
息が上手くできなくて声が出ない。
ああ、なんて
みっともない。
情けない。
いつも何も出来ない。
役に立たない。
なぜ生きている?
顔がびしょびしょに濡れてきた頃、地面に頭をつけて動けなくなっていた。
意識が朦朧としていく。
目の前が真っ暗になり意識を手放す寸前のところだった。
…ねぇ………ね……か………あか………
「アカネ!アカネ!ねぇ!しっかりして!!」
はっと目が覚めた。
ルームメイト、相方、今日いなくなった、探していた、ナンバーが、そこにいた。
「アカネ…ごめん、ごめんね…本当に、ごめん……ごめん…」
彼は俯きながら呟いている。
自分は自分で、呼吸を整えるのに必死だった。
彼は1人で、呟き続けた。
「アカネ、ごめん、何も言わずに、勝手に出てきちゃって、昨日も、何も教えないで秘密にして、ごめん、こんなに、心配してくれると思わなかった…」
彼は、呼吸の落ち着かない自分を気遣って背中をさすりながら、何度も何度も謝罪した。
「ごめん、ごめんなさい......」
「…そん、なに…謝らないで…」
声を絞り出して伝えた。
彼の謝罪は、不安になる、彼がいつもの彼らしくなくなっていく気がして、これ以上は聞きたくなかった。
「そう、だよね、ごめん、じゃなくて、ありがとう
アカネ、心配してくれて、探してくれて、ありがとうね」
ようやく、いつもみたいに笑ってくれた。
その笑顔が、自分を一番安心させてくれた。
彼は、まだ足元がおぼつかない自分の肩を担いで、歩いていった。
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