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店員相手に毎日世間話などしないだろう。
こっそり元気は頂いていたが、わざわざ会話を楽しんでまで根こそぎガッポリいただこうとまでは思っていない。
それに最後だ、最後。
高校生に可愛いなんて言われてどうする。
高校生は気持ち悪いものでもグロテスクなものでも、キモ可愛いだのグロ可愛いだのと言ってすぐに愛でる節がある。
俺もそれか。
って結局キモいんじゃないか。
おっさんがタルトを食って顔綻ばせてりゃそりゃもう……
うわぁ、俺キモいな。自分で思うわ。
「あ、ちょっと何凹んでるんスか?
もしかして可愛いがいけませんでした?」
もう何も言わん。
決して口など開いてやるものか。
さっき決めたところだ──…。
「はい、タルトラスト一口です」
ぱくん
うま。
仕方ない、許してやらんこともない。
口の端に付いてしまったタルトのカスを拭き取られながらハンドルを握る。
隣からまた笑い声が聞こえた気もするが、タルトに免じて今回だけは大目に見てやるとしよう。
チーズの香りを口の中で堪能して、気分良く佐々木の案内する方向へと進んでいた。
そう。もうすぐで到着する予定だったんだ。
それなのに──。
「えと、この橋渡った向こうなんスけど…。」
「………俺の車は残念ながら潜水艦ではない。」
「………………そ、スよね…。」
目の前を流れる川らしきものは、橋を飲み込んでもなお水位の上昇を続けており、車であろうととても渡れるような状態ではなかった。
やけに水が流れ込んでくると思ったのはこれが原因だったのか。
本音を言うと今すぐにでも引き返して身の安全を確保したい。こんな所で立ち往生でもしてしまった暁には……俺は男子高校生と心中という末代まで語り継がれる恥ずかしい死を迎える事になる。
だが、可能性を諦めない若者が隣に乗っているとなると簡単に「よし辞めた」とはならないもので。
「回り道は無いのか。」
「結局どこから行っても橋は渡らなきゃ無理っす。」
「この付近に一晩泊めてくれる様な友達は?」
「居ても橋の向こうっす。」
無理じゃないか畜生め。
「…はぁ。親御さんに連絡しろ。俺の家に行くぞ。」
佐々木を送り届けるミッションは諦めざるを得なかった。
そしてこれみよがしに溜め息を吐いてUターン。道自体が広かったのが唯一の救いだ。あと法月みたく無駄にデカい高級車に乗っていなかったことも。
「な、なんか…本気ですんません…。」
「仕方ないだろ。こんな天気なんだ。」
別に人を1人泊めるくらいなんてことはない。
部屋は広いしちょうど先週末に掃除をした所だ。
だが、そこじゃない。問題は。
つい先日、背が高いのが良いと言ったのは何処のどいつだったかな。
俺の本当の姿を知らない佐々木に、これから見せる光景がどれだけ恥ずかしいものか。
あぁ、もう。
本当に今日はとんでもない日だ。
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