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「おじゃましまーす!
……ってあれ?竹内さん入らないんスか?」
重たい靴下をもとっぱらい、不思議そうに振り返る佐々木。
入りたい。
可能ならばこの雨でぐしょぐしょになった靴を今すぐにでも脱ぎ捨て、洗って乾かし、シャワーを浴びて、リビングで落ち着きたい。
でもそれをそうさせてくれないのは佐々木、お前のせいなんだ。
「ここを真っ直ぐ行って右に曲がると風呂だ。
着替えは持ってきているんだろう。洗濯機の上にタオルがいくつかあるからそれを使え。」
何ともおかしな光景だ。
人を上がらせておいて、家の主は玄関から一歩も動かずにいるだなんて。
「いやいや、そんな申し訳ないっすよ!
風呂なら竹内さんが先に入ってください!」
くそ…だめか。
それなら
「一番奥がリビングだ。適当にテレビでもつけて過ごしていてくれないか…。」
「えぇ………。」
外は大嵐、鳴り止まない雷鳴。
頼むから今すぐ停電してくれないかと天に願ってみるものの、そう簡単に都合よく進む人生ではない。
「……わかった。もういい。
わかったから今日の事は、絶対に忘れろ。いいな。」
──覚悟を決めろ。
一般的とは言い難い、分厚い底のブーツから足を抜く。そこから更にベルトで固定した靴ベラを剥がし、爪先まで隠れるスラックスの裾を折り返した所で、ようやく締め付けから解放された。
んん、流石の厚底でもこの大雨だと靴下までびっしょりだ。
明日、会社が休みで本当に助かった。
ここまで底の高い靴は他に持ち合わせていないからな。もし明日が平日あれば、慌てて洗ってドライヤーの冷風で永遠に乾かす地獄のような作業に没頭する事になる。
ふ~。
深く吐いた息は、ため息というより深呼吸に近い。
長い一日が終わった。
ぐっと伸びをして、目を開けると
そこに見えたのは──…首。
いや、ホラーとかじゃない。
目の前に立つ、佐々木の首元。
さっきまで俺より目線の低かった佐々木の、首。
「……………竹内さん……その…随分とミニマムサイズだったんスね…?」
「……うるさいぞ。」
そう。これが、俺の秘密。
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