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「おはようございます。今日はいつも通りに戻ってしまったんですね。」
朝も早くからキラキラと胡散臭い笑みを浮かべる隣の部下に小さく頷く。声を出すのも面倒だ。
やけに馴れ馴れしくなったのは、やはり先週末にマスクを外した事が原因だろう。
もう一生…は無理だが、可能な限りマスクをつけて生きていきたいものだ。
「それにしても金曜の夜は本当にすごい天気でしたね。」
「……あぁ。」
「すぐに復旧しましたけど停電までしちゃって。」
「………そうか。」
あまりその話はしないで欲しい。が、事務所中先日の嵐の話題で持ちきりである以上は…仕方のない事で。
適当に相槌を打っていればいつかは話が終わるだろうと諦めたわけだが、頭の中にはぐるぐると渦を巻く黒いものがある。
金曜の夜に起きた出来事。
停電の間に起きた出来事は、どうにも天気だけでは言い逃れできない部分がある。
どんなに雨が降ろうとも、それが罪を流してくれる事は無くて。
それだけじゃなく、本来抱くべきではない感情を抱いた(かもしれない)んだから更にタチが悪い。
月曜…すなわち今日の仕事終わりにコンビニへ行けば会える事を嬉しむ感情と、こんな浮ついた気持ちを落ち着ける間もなくひょこひょこと会いに行ってしまって良いものかと悩む感情が交差する。
脳内は混乱状態が続き、整理もつかず迎えた月曜。
今日からまた5日間は仕事に追われてそれどころではなくなるだろうから、忙しさを言い訳に忘れる事も出来る、か。
大丈夫だ、大丈夫。
俺も大人だ。
「竹内さん、何か考え事ですか?
なんだかいつもと様子がちが──。」
「いやそんな事は無い。今週も仕事頑張ろう法月。」
「………竹内さんが僕にそんな長文の返答をくれる日が来るなんて…。」
つい余裕なく口走った言葉は、いつもならば頭の中で唱えている独り言だ。
いつもと様子が違うなんて、まったくこいつは俺のストーカーか何かだろうか。
辞めてくれ、こんな時に。
お前が俺に向けるその目がシャレにならないんだ、今は特に。
落ち着くまで待ってくれ。
明日…いや、明後日までには平常運転に戻ってみせるから。な?法月。
「………なんだか今日はよく話しますね、竹内さん。興味深そうな話じゃないですか。お昼ご一緒にどうですか?」
「………え。」
信じられない。
今考えていた事が、全部口から洩れていたらしい。
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