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「──で、竹内さんは犯罪者のレッテルを張られてしまったというわけなんですね。大丈夫ですよ、僕そういうの気にしないタイプなので。」
待て、そういうのってどういうのだ。
というかやはり俺は犯罪者なのか。
聞かなきゃ気が済まないって顔して永遠に隣の席から見続けられるものだから、法月に一連の出来事を話す事にした。まぁ言えない事は山ほどあったが。
夜に起きたハプニング、それを機に無駄に反応してしまうようになった身体、押し隠したい邪な気持ち。
特に感情面に関しては、まだ確定事項でもないのに誰かに言うのは早すぎる。
口に出してしまえばいつかその気持ちが気のせいではなくなってしまう気がして。
──って、そんな事より。
犯罪だのなんだの言っているせいで周りからの視線が痛い。
辞めてくれ、そんな目で見るな通行人AとB。
今日新発売の『生まれ変わったナポリタン』が不味く感じるじゃないか。
ちなみに昨日まで販売されていた生まれ変わる前らしいナポリタンとの味の違いは聞かないでほしい。
安定のロ○ソン、そして安定の一番綺麗なイートインスペースを確保してくれた部下のお陰で、俺は優雅にパスタを食すことが出来ている。
手前に座る男は、今日も今日とて持ってきた筈の弁当には見向きもせず、俺に合わせてコンビニ飯を口へと運ぶ。
こいつと食事をしたのは今日で2度目だが、相変わらず品のある食べ方というかなんというか。
こういう男に世の女性は惹かれていくのだろうと思わず感心してしまう。
ただ一つ問題があって……こいつが好きなのは、そういった世の女性群ではなく何が良いのか男の俺だ。
「男を好きになるって…どういう気分なんだ。」
思わず口からこぼれた言葉を、法月は微笑んで聞き入れる。
この問いかけは俺に対する法月の気持ちと、名も知らぬ男に対する佐々木の気持ちを聞きたかったというだけ。
ほんの些細な好奇心であり、他には何の意味もないのだ。
なんて。それこそ意味をなさない言い訳を自分の中で繰り広げ、ふと彼を見上げた。
先程とさほど顔つきを変える事もなく、緩く上を向けた口角のまま、法月はぽつりと呟く。
「竹内さんなら、どういう気分になりそうですか?」
言葉が、突き刺さる。
決して攻めるような口調で言われているわけでもなければ、むしろ優しく問われているだけなのに。
考えなんて纏まらない。
性別、年齢、世論、何をとっても、どう足掻いても…。
「世間の普通を当たり前に選べないのが、苦しい…。」
法月の静かなため息は、自動ドアと連動するチャイムの音にかき消される。
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