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結局俺たちは、缶コーヒー片手にコンビニを出た。
イートインスペースではなくなぜか外。
どうしてかと法月に尋ねれば、こちらの方が面白い気がして、と訳のわからない返事をされてしまった。
こいつが何を考えているのか俺には全くわからない。しかし今までの経験からして、ろくなことを考えていないのは確かだ。
そして俺自身法月の手のひらの上でいつもコロコロところがされている。…気がする。
とんでもない部下と出会ってしまったものだ。
「竹内さん。」
「…?」
「さっきからソワソワしてどうしました?」
「………別に。」
可笑しそうに笑うその横顔は、夕日に照らされて橙色に染まり、男の俺でも見惚れるほどに美しく見えた。
風の噂でこいつの以前ついていた職なんかも聞いた事があるが、それが例え本当だったとて誰もが認めるこのルックスだ。
「…?何か顔についていますかね?」
ばっちりと目が合ってしまい、それを法月に見ない振りをしろというのも無理な話。
何でもないと流しても、経験上この男は俺が何かを言うまで半永久的に理由を尋ねてくることだろう。
俺の嘘は通じない。
コレの扱い方といえば、それは一つしかない。
正直になることだ。
「…よく話には聞いていたが、格好良い顔をしているんだな…と、思って…。」
別に、俺単独の意見ではない。
周りがそう言っていたから、あくまでそれを踏まえて見てみた結果の話だ。
あまり調子に乗りすぎないよう、そんな回りくどい言い方をする。
まぁ考えてみれば法月自身、そんな言葉は聞き慣れているだろう。
この俺に話が回ってくるという事は、かなりの広範囲でその噂が広まっているという事なのだから。
俺の返事に法月はきょとんとしている。
そうか、そうだな。
当たり前だな。
またそれかって事だろう。その顔は。
…なんて奴だ。
もう少し純粋無垢な部下を入社させる事は出来ないのかうちの会社は。
純粋…そう、例えばこのコンビニで働いているアイツのように──。
「ふふ、竹内さんにそんな嬉しい言葉をいただくと正直照れますね。」
法月はへらりと笑った。
絶対に照れてなんかいないだろうに。
「あ、そうそう竹内さん。」
「……なんだ。」
「僕の顔には何もついていなかったようですが、
竹内さんには少しついていますよ。」
「?!」
なんだと。どこに何がついている。
この野郎、気付いていたなら早く取れ。
俺は右手を伸ばす法月に従うよう瞼を伏せた。
その理由は簡単だ。
法月の手が、俺の前髪の辺りに伸びてきたから。
なのに──。
「…れ、竹内さんじゃないスか。つか誰?何しちゃってんの?」
慌てて目を開けると至近距離に法月の顔があって。
その奥には…自転車を引く学ラン姿の男がいたのだ。
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