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エロい事とはなんだ。声出ちゃう系とはなんだ。
それより何より俺を逃がさないとでも言いそうな長い腕はなんなんだ。
「佐々木…座りたいんだが。」
「だめっスよ。俺の質問に答えてください。」
「……こ、答える必要があるのか。」
佐々木の威圧感に負けそうになりながらも、目を背けず何とかギリギリ平静を装う。
野生動物も敵と目が合った際には先に逸らした方が負けで背を向けた瞬間追われる羽目になるのだ。
最も、ここにいるのは野生動物などではなく、会社と学校に飼われている人間なのだが。
「んー…答えてくれないなら試していいスか?」
「はぁ?!お前何言って──…。」
「あれ?俺言いませんでしたっけ?あ、モチ男しか受け付けないわけじゃないんスけどね~。」
佐々木の表情は、飼われ人間などもっての外…野生動物などという大きなくくりの中にもいない。
百獣の王を思わせる顔つきへと、いつの間にか変わっていた。
…確かに佐々木は言っていた。自分が今、想っている人物は男だと。
それに対して偏見を持つこともなければ、気持ちが悪いと切り捨てることもない。
自分自身、他でもない佐々木に対して近しい感情があるというのは、信じ難いが本心だから。
「だ…だからって、いきなりそうなるのは…おかしいだろう。」
「何もおかしくない。竹内さんも馬鹿っスよね。俺がそーいう奴だって知っててノコノコ上げちゃうなんてさ。」
「……な、佐々…。」
「俺に何かされるかもとか思わなかったんスか?マジで警戒心ガバガバ。」
更に距離を縮める佐々木の顔が、近くて。
もうまともに焦点も合わないくらい、視界の全部が佐々木に埋め尽くされて。
真っ直ぐに俺を見下ろすのは、獲物を見つけた王の瞳。ふわりと香るのは、この家のどことも違う佐々木の匂い。
恐怖とは別物の、自分でも訳がわからない心拍の速まり、凍り付いたように動けなくなる身体。
反論の言葉を探そうにも、何とか距離を取ろうにも、心も身体も逃げ場を失った今の俺はまさしく袋のネズミ状態だ。
「…っは。なんて顔してるんスか。この期に及んでまだ煽るとか…。」
もう、佐々木が何を言っているのかもわからない。
俺の耳に届く声は確かに佐々木のものなのに、次第に大きくなる呼吸の音も、自身の髪の毛を揺らす熱い吐息も、すべて佐々木のものなのに。
佐々木のものである、はずなのに。
俺の隣でキャンキャン騒ぐ舎弟ワンコとは違う、恐らく素の状態であるこいつにいつも絆されそうになって、熱くて溶けてしまいそうになるのは俺で。
息の仕方も忘れるくらい、佐々木という存在全てに支配されてしまうのは、俺で。
恐怖だとかビビっているだとか言い訳していたそれが、興奮から来るものなのだと頭が理解するよりも先に認めてしまったのは身体の方で──。
「…竹内さん、期待してるスよね。だってほら。……勃起してますよ。」
「っあ、」
俺を閉じ込めるそれとは反対側の手が、情けなくもスウェットを押し上げるモノを弾いた。
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