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「っあ、」
自分の口から出た声は、忘れたくても忘れられなかったあの嵐の夜のそれとよく似ていた。
その時も、佐々木に触れられた。
その時は、佐々木は眠っていた。
でも今は…?
俺は慌てて口を押えた。両手を使って、息もできなくなるほど強く。
「…下じゃなくて口なんスね。塞ぐのは。」
「んんっ?!」
まっとうな意見だ。俺自身、どうしてそちらに気が回らなかったのか不思議でたまらない。
「触られるのは嫌じゃないって…俺、そう捉えますよ。調子乗りますよ、いいんスか。」
「ん、ふ…っ。」
“触られるのは嫌じゃない”
…俺が俺の身体に疑問を覚えても、その答えは佐々木によって強制的に示し出される。
まるで答え合わせをされているようだ。俺よりも大きな手が自身に沿ってゆっくりと滑る。それでも俺の両手は口元を押さえて離さない。
自分の身体なのに、その主導権は佐々木に握られているみたいだ。自分の意志で動ける筈なのに、頭で思う事とは真逆の行動をとっているのだから。
「…どんどん硬くなってきましたよ。でも…。」
ふと昂ぶりから手を離した佐々木に、俺は眉の端を下げて訴えかける事しか出来ない。
それはまるで「どうしてやめてしまうんだ」と、それ以上を欲しがるようにも感じられて。
が、佐々木はそれをわかりきっていたかのように高い位置からフッと笑みを零すと、口元を覆っていた手をおもむろに掴み取り、がばっと頭の上で縛り上げた。
佐々木の片手で収まってしまう己の手首の細さが憎たらしい。憎たらしいと、“頭では”確かに思っている。
「俺、竹内さんが感じてる声好きなんで。口押さえるのもだめ。」
一体何が起こっているんだろうか。
一体何が起きようとしているのだろうか。
裾を捲し上げながら侵入してくる筋張った手の感触に背筋は粟立ち、腹の上を走る熱く湿った舌に腰が浮いた。
本当に嫌ならば、本当に辞めて欲しければ、それに従うと上から目線で嘲る様に、
俺の腕を縛り上げるそこに力が込められていない事には……はじめから気が付いているのに。
でも、それなのに。
「…あ、やめ……っ佐々木ぃ、ぁ…。」
口でしか反抗しない無様な自分がいた。
蹴り飛ばしてでも、怒鳴りつけてでも、今の状況を抜け出す方法はいくらでもあるのに、だ。
俺の膝を割って入る佐々木の股は、俺程ではないにしろ確かに見てわかる程の反応を示していて、スラックスによる締め付けが辛くはないだろうかと同性として心配をするまでに至っている。
そう。俺達は同性なのだ。
男と男。
今のこの2人の在り方が正常ではないという事だけは、痛いくらいに自覚してしまうのだ。
それでも俺は、まだ未成年の佐々木に。きちんと想い人のいる佐々木に、それはいけない、もうやめろと言う事が出来ない。
出来ないのではなく、言いたくない。
佐々木を現実世界に引き戻してしまっては、俺が辛くなるだけだから。
いつ我に返った佐々木が、俺を拒絶し、軽蔑し、離れてしまうかわからないから。
怖いから。
年齢のくせに下手したら俺よりも慣れている手つきで佐々木の人差し指が俺の肌とズボンの境目を引っ掻く。
「…脱がしてよければ、腰…ちゃーんと浮かせてくださいね。」
「ふっ、ぅ…………っ。」
もう今更、その中を暴かれる恥じらいもクソもあったものではなかった。
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