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決して冷えている訳では無い佐々木の手も、俺のこの火照った身体では氷のように冷たく感じた。
遠くで鳴るオルゴールよりも耳に届いてしまうのは、静かでありながら熱の込められた吐息。
逃げも隠れも出来ない拘束された身体をゆっくりと辿っていくのは、俺より大きな掌だ。
縦、横…円を描いて、目的地を見つけたように腹の上を走る指先。
それが辿り着いたのは、男の俺では僅かな膨らみすら見られない貧相な胸元。
「胸はあんまし感じないんだ。開発されてない感じ?」
「感じない、に…決まってんだろ……。」
正直、これが気持ち良いなんて思う奴の気が知れないんだが…。
指の這う違和感と、隠すこともかなわない羞恥で身を捩るものの、何となく擽ったいだけでそれ以外の感想は出て来ない。
だが、佐々木は俺の良いとは言えない反応を前にしてもなお、そこへの愛撫を辞めてはくれないのだ。
どうして…そんなところ、ばっかり。
違うだろ。
もっと、そこじゃなくて
触って欲しいところは他に、あって。
夢なんだから、俺の思うようになれよ。
佐々木は夢の世界でも俺の思い通りにはなってくれないのか。
そんなの……嫌だ
こんな物足りないばかりの佐々木じゃ、ダメだ。
「そこ、もう……いいから…っ、下……した、触れよ…!」
一瞬、動きを止めた佐々木に更に捲したてるように続ける。
「この前の……俺、ずっと忘れられなくて…っ。
佐々木の…口、気持ち…よくてっ!」
自分から発する声なのに、思うように呂律が回らない。
言いたい事を上手く言えない。
あぁ、こんな事になるのなら、起きている時でも素直に言葉を吐き出していればな。
そうすれば、今みたいに頭の中がぐちゃぐちゃで、まとまりの無い言葉を垂れ流さずに済んだだろうに。
ぼうっと上を見ていた視線を、佐々木の頭部へと移す。
待ちくたびれたと言わんばかりに、当たり前のように混じり合う瞳は、どこか懇願するようでいて、拭い切れない不安を宿す。
何を考えているんだ
何を躊躇っている?
今だけは、俺は佐々木のもので
佐々木も俺のものだろう。
「……止まんなくなっても知らねえよ。」
「止まる必要が…どこに、あるんだ。」
「──へぇ。」
片方の口角だけを器用に上げた佐々木は、俺の肌から手を離すと、ベッドサイドに置かれた小さな袋を乱暴に掴み取った。
そして、それを俺の足元にバラバラと散らし、姫の手を取る王子のような佇まいで静かに腰を落とす。
佐々木の顔の目の前にあるのは…俺の……。
「ッ、あぁ…ひぅぁ、えぅっ!」
下着の上から簡単に含まれたそれは、布に吸い付かれるジュッという音にも反応を示し、感じた事の無いむず痒さに腰が震えた。
たまに歯を立てられるのかビリビリと鋭い痛みが走るものの、それ以上に押し寄せてくる快感に息を吐く事もままならない。
「……ビクビクしてる癖に、あんま勃ってないね。やっぱ酔いすぎじゃん。」
薄いグレーの下着の為に、唾液の滲んだ部位がよくわかってしまう。
確かにそこは、俺自身の感じる快楽とは裏腹に、半分程度持ち上がっているだけだった。
気持ちいいのに……なんで、だよ。
これじゃ佐々木に、呆れられてしまうかもしれないのに。
「佐々木、ごめ…っ、きもちいのに……。びくびく、なるのにぃ…。」
「……じゃ、別のとこも試してみよっか。」
「ふえ…?」
“別のとこ”
そう言うと同時に、佐々木の手はするりと下着をずり下げた。
はだけにはだけた浴衣一枚のあられも無い格好で、俺は佐々木の動向を伺うばかりだ。
ふと、足元に落ちているひとつの袋に目を移した。
それは先程、ゴムと一緒に掴まれた少し大きな袋で、上部を僅かに破った佐々木の手に、トロリと流れ落ちる透明な液体の正体は──。
「他の奴なんか忘れるくらい気持ちいい事しようね。竹内さん。」
ゴクリと唾液を飲み込んだ音が
やけに大きく、全身に響いた。
それはまるで、佐々木に全身を暴かれる事に
期待をしているようだ。
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