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熱は確かに感じるのに、その感触は人の肌とは違う無機質なもの。
自ら着けた事はあるが、人のモノに装着されたそれが俺の入り口にあてがわれる、なんて。
夢にしては妙にリアル。
いおりの温度も、呼吸もわかる。
何より、俺の火照り切った身体がもうずっと熱くて、疼いて、苦しくて。
「……れるね。」
俺に囁くというよりは、自分自身に言い聞かせるように。
小さな声で、だが力の入った声色でそう言うと
いおりはゆっくりと、腰を押し進めた。
「…っ、ぐ……!」
ついさっきまで簡単に指数本を咥えていた筈のそこが、今までに味わった事のない異物感に震える。
力など抜け切っていたにも関わらず、再び無意識に力んでしまったのか一向にいおりの昂りを呑み込めないのだ。
どうして…っ、どうしていつも上手くいかないんだ。
仕事だってそう。
飲み会なんかは断れる癖に、押し付けられる雑務は断れない。そんな自分のせいで孤立して損ばかりして。
お前の事も。
何度も自責の念に駆られ、夢の中だけでも気持ちが通じたというのにそれ以上先には進めない。
生憎神や仏は信じないタチだが、もしも本当に存在するならば
俺は酷く嫌われているだろうし、前世では新聞の一面に取り上げられるような凶悪な犯罪でも犯したのだろう。
ごめん、いおり。
辛いよな。
真上で汗を垂らしながら俺の様子を伺う姿に、目尻から温かな雫が伝う。
だが、それが枕を濡らす前に、いおりの舌に掬われた。
「…あー、と。これは舐めただけだから。キスじゃないよ。」
舐めるでもキスでもどうだって良いよ馬鹿野郎。
というかしつこい程俺のあんなところやこんなところをベロベロじゅぽじゅぽしていたじゃないか3分前のお前。
「なんだっていい…から、早くしてくれ…っ。」
「だめ。」
「はぁ?!何で…!」
俺の渾身の誘いでありながら、いおりの返事はノー。
おかしな話だ。
俺たちが繋がる為の背景はこの上ないほど完璧で、ここぞという時は都合よくうまく展開していった俺の夢というドラマの中
今、いおりの台詞はイエスでなければいけないのに。
気付けば、ぴたりと押し付けられていた熱は離れていて
20代半ばには少々キツかった開脚も、随分と角度が穏やかになっていた。
「暁人さんが痛い事は、俺も痛いし。
今日が無理でもその次にまたチャレンジしたら良いじゃん。」
「な…何、言って……。」
次なんてあるわけないのに。
使えない頭だ。本当に。
勉強だの商談だの、これまで幾度となく使えないと思ってきた自身の脳をここまで憎むのも初めてだ。
と、その時
バチンとゴムが弾けたような音を聞き、ふと視線を下に落とす。
いおりが自身から避妊具を外し、へなり伸びて草臥れたそれを傍のゴミ箱に投げ捨てたのだ。
「今日は、一緒に…前で気持ちよくなろ。」
反論は聞き入れないとでも言うように、左の手が俺の口元を塞ぐ。
そのまま手の甲に自らの唇を落として。
交わった目は、“これはキスじゃない”と訴えている。
俺のほんの一言を忠実に守る彼が、どうにも愛おしく思えてしまってクスリと息を溢せば
ワンコは嬉しそうに微笑んで、熱を持った昂りに触れた。
──その先のことと言うのは正直曖昧だ。
夢の終わりなんてこんな物か。
徐々に意識は薄れていく。
夢の終わりを目前に控え、自身が果てるのと殆ど同時に息を詰めるいおりの呼吸が聞こえたような気もしたが
それ以降、もう一度夢の世界に戻る事は出来なかった。
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