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相手は高校生。という事は10近く年齢の差があるという事だろう。
そんな一回りも上のおっさんが隣でタルトを喰ってみろ。
気持ち悪いに決まっているだろうが。
…なら、おにぎりか。
いや、待て。
例えば具材が梅やおかかだったとすれば、本当に余り物で仕方がなかったともとれるだろうが(梅、おかか信者には誤解を招く言い方をしてしまったな)
佐々木が持っているのは具だくさん生姜焼きだ。
具だくさんなのだ。数ある廃棄商品の中、これを狙って持ち帰ってきたのは間違いない。…推測だが。
だって高校生は肉やら具だくさんやらが好きだろう。
しかもよく見てみると左上に“新発売”とまで書かれている。
……こ、これは……選べんぞ……。
信号2つ分の時間をかけ、ひたすらに悩んでようやく出した答え。
それは――…。
「…好きな方を選んでくれればいい。」
これしかないだろう!!
俺の事はいいからお前の好きにしてくれ。
人と会話をすること自体が苦手、更に相手がぴちぴち10代の高校生ともなると、それが更に難しくなるわけで。
そもそも無理して話さなくても、夜のテンションに変わりつつある落ち着いた雰囲気のラジオは流れているし、窓の外なんか大嵐だ。
ボディを本気で凹ませにかかっている勢いの雨音にこちとら冷や汗レベルである。
無音の空間になることはない。よって互いに会話が途絶え、静かで気まずい空気になる心配もない。
この際寝たふりでもしてもらいたいのだが、話す事が好きらしい佐々木は雨音にも負けない声で言葉を運び続ける。
「選んでいいんスか?だってこれ、そもそも俺が好きで選んできたやつだからなぁ…。」
ほーーらな。思った通りだ。
それならお前が一人で食べればいいじゃないか。
はじめからその予定だったんじゃないのか。
何故俺に分けてくれようとしたのだろうか。
だからそういう気遣いはいらないと言ったのに。
…べっ、別に食べたかったわけじゃないしな。
タルトが美味い事は知っているし定期的に食べたくなるし、何なら現物を見てしまえば口内にいつの間にか唾液が分泌されていたくらいで……食べたいとか、思ってないし。
「俺はいい。一人で食べ――。」
「じゃあ竹内さんはタルトで!」
「は?」
思わぬ言葉に間抜けな声が出る。
お前、今自分が言った事を忘れたか?人が好きで持ち帰ってきたものを、よっしゃーいただきますと食えると思うか?
ついつい佐々木に目を取られ、思った以上に狭まっていた車間距離に慌ててブレーキを踏んだ。
「……っ、すまない。」
「ん?何がっスか?」
「いや…お前を見ていたら前に気が付かなくて…ブレーキ、急に踏んでしまってすまない。」
「…あ、あ~それ!全然気にしてないっスよ!
むしろ竹内さん運転うますぎ快適すぎ!」
それは少々言いすぎな気もするがな。
それともこいつの身内は運転が下手な奴の集まりなのだろうか。
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