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「よかった~~!ありがとうございます気付いてくれて!」
「いや……構わない。」
「ってかこんなんじゃ竹内さんちにも忘れ物あるかもっスねー。」
「あぁ。もしあったらバイトの日にでも──…。」
そう言いかけたところで、佐々木がスマホを手にしていることに気が付いた。
こ…これはもしかして、そういう事なのか…?
「もし何か置きっぱなしだったら連絡貰えますかー?竹内さんQR出せます?」
「ん、あ……あぁ…。」
なんやかんやで佐々木の連絡先が俺のスマホに追加されてしまったようだ。
このくたびれたサラリーマン、御年26歳独身。高校生と軽率に連絡先を交換する事が許されるのだろうか?
それくらいは普通か…。
いや、既に俺は犯罪級に許されない事をしてしまっているわけで、ならば今更何を思ったところで遅いのかもしれない…。
「…けうちさん!たーけーうーちーさーん!!」
「な、んだ!!」
またぐーるぐると一人の世界に入り込んでしまっていた故に、耳元で大声を出される始末。
挙句飛び跳ねて驚いた俺の口からは、普段では全く出さないようなボリューミーな声が出た。
「あはは、そんなびっくりしますか。
あの、変な意味じゃないんすけどー…。」
目を細める佐々木は高さの変わらない視線から、わざと上目遣いで見上げ、口角を上げる。
「竹内さんマスクない方が表情の変化わかるし、よく一人で何かぶつぶつ言ってるの面白いし可愛いし…やっぱ俺マスク無し推します!!それじゃ!!」
勢い良く手を振って去る佐々木の背中を呆然と立ち尽くし、眺めた。
毎日毎日忘れることなく着用していたマスクだが、そういえば今日はすっかり忘れていた。
そもそも人との関わりを遮断したくて着け始めたマスクだったのに。
一人が楽で、誰かと一緒に過ごすことなんて出来っこなかったのに。
不思議と疲れてもいないし
なんならまだ、もう少し佐々木と居たかった…なんて考え出してしまう自分がどうもおかしい。
………。
いや、それよりも。
ぶつぶつ言っているのか、俺。
もしかして心の中で呟いていると思っていた事が口に出てしまっていたのだろうか。
それは困る。
困りすぎる。
やはり、マスクは手放せない。
勿論この先も、佐々木の前だとしても、だ。
もし今後またこうして会う機会があったのなら、その時は忘れずマスクを着用しよう。
あ、いや。別に次があることを期待しているわけではないのだが。
完全に佐々木の姿が見えなくなったところで、ようやく俺も車に乗り込んだ。
先程とは打って変わって静けさを蔓延らせる空間に、胸がキリキリと痛む。
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