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「あの…本当に道あってるんスか?」
「んー?おうっ、そこを右だ!その次は左に行ってみよう佐々木ぃ!」
「はぁー…。」
ダメだこりゃ。絶対に辿り着かない。
竹内さんを背負って歩くこと20分。いくら小柄とはいえ、大人の…それもベロンベロンで力もまともに入らないような男を支えるのは相当腰に来る。
そしてそんな疲れ以上に俺を戸惑わせるのは、他の誰でもない、竹内さんの態度、温度、息遣いだ。
「…さーさき?疲れたか?」
「え?あぁまあ…少しだけ。」
「そうか。俺の元気をわけてやる!ぎゅぅ…っ。」
いつにも増して可愛すぎる竹内さんは、なんと俺に自ら抱きついてきては“ぎゅぅ”なんて効果音付きで嬉しそうに笑っている。
笑顔なんか超絶レアな竹内さんが、こうも簡単に見せつけて来るのだ。3秒でも目を合わせていたら俺は永遠の眠りにつく事間違いない。
「…スン、やっぱりお前、いい匂いだな。でも今日はちょっと…ちがう。」
「……泊まってたとこのシャンプー使ったスからね。」
「俺の…におい、うつしてやるっ!」
いやもう本気で勘弁してくれよ。
今すぐ俺の泊まってた旅館にお持ち帰りしたいわ。それか、どこか2人で居ても見つからないような所でもあれば…今すぐ立ち寄ってしまいたい!
と、邪な願望を抱いていれば
竹内さんの言う通り左に曲がった瞬間……
見つけてしまった。
2人で居ても見つからない、場所。
「ん〜?なんだ、こんな所にラブホがあるのか。
佐々木、今日はここにしよう。疲れただろ。」
「しっかりした口調の割に言ってることめちゃくちゃっスよ。」
「え?」
「いや……なんも。」
細い道を入ったすぐ。
観光地からそう離れていないそこに一軒ぽつりと建っているのは、妖しい雰囲気を漂わせながらピンク色の人工的な光を灯す、ラブホテルだった。
本気で入るつもりかよ、この人。酔っ払い怖いな。いや、むしろサイコー。
竹内さんが泊まっていた場所は知らないけど、勝手に出て、夜中中戻りもしない…って大丈夫だろうか。
まあ、そんなのは俺の知った事じゃない。
俺が今すべきなのは──。
「竹内さん、ちょっと失礼しま〜す。」
「んぅ?なん、あっぁ!」
竹内さんのお財布チェックだ。
途中、懐を漁っただけでエロい声が聞こえた気がするが、それはこの後嫌と言うほど聞けるだろうから当然スルー。
流石に?酔っ払いの介抱してやるんだから竹内さんに出してもらっても良いっしょ?俺ジュース買う分しか金持ってきてなかったんだもん。
…それも全て、この人の煙草代に消えたわけだが。
部屋番号の表示パネルを適当にタッチして、出てきたルームカードを取る。その様子を、俺の首に腕を回して眺める竹内さんは、何処か寂しそうな顔をしていた。
「……慣れてる、な。」
「え?そーでも無いスよ。」
「ふぅん…。」
首元に吐かれた吐息の熱さに、途端に鼓動が速まる。それに気づいたのか、無意識なのか、更に俺に密着する竹内さんを拒む事など出来る筈もなく。
とりあえず、相部屋の友人に遅くなるから寝てていいよとだけメッセージを残した。
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