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「こーちゃん久々!」
「おー!伊織じゃーん!」
自分から呼んでおいて偶然出会いましたみたいな言葉選びはどうかと思う。
本当に見た目も口調もバカで和むわ。
こーちゃんこと“こうたろう”は俺の前の高校での一番のダチだった。
一緒に騒いで、はちゃめちゃやって、無駄にイキった不良に売られた喧嘩を買ってるうちに…俺らの金魚のフンしてくる奴らも出て来たっけか。
懐かしいな、この駅も。
「あれからどう?変わりない?」
「あー、今は落ち着いてるし大丈夫。悪いな…オレのせいでお前が転校する事になっちまってさ。」
「それはもういいって何回も言ったろ。」
会った途端そんな悲しそうな顔すんなよ。
今日はお前の誕生日祝うために、わざわざ髪まで色変えて来てやったんだからさ。
鮮やかな赤と、反射した日光に目を細めながらも、逞しい背中を力一杯叩いてやった。
「いっってえぇ〜」とか言って騒いでるけど、右手に握られたスマホのカバーはリ〇ルツインスターズって描かれているし、ホーム画面にはキキとララが仲良くステッキ振り回してる。
こいつが周りに恐れられているっていうのが昔から本当に理解出来なかった。
こんな見た目ゴリマッチョみたいな奴が本気でキキララ愛してんだよ?こんな可愛い奴他に居ると思う?(もち、竹内さんは別格ね。)
「んで?今日俺を呼んだって事は、こーちゃんまだ彼女作れてないってわけね?」
「なっ、お前…言っていい事と悪い事があんだろ!そういう伊織はどうなんだよ!」
「俺?くっそ残酷な振られ方したよまだ1週間も経ってねえ。」
「えっ……それはゴメンだわ…。」
そうじゃなけりゃ今頃竹内さんと連絡とって何とか会いに行ける口実作ろうと脳みそフル稼働させてるわ。
思い切り“言って悪い事”の方を言っちゃったこーちゃんは赤い髪に似合わない真っ青な顔で肩を竦めた。
「とりま向かおうぜ。こーちゃん何時予約してあんの?」
「おう!この駅から徒歩5分の会場なんだけどな、えっと集合時間が──。」
楽しみを待ちきれなかったのか、俺との近況報告会がもう少し盛り上がると思っていたのか。こーちゃんは予定の2時間も前に俺を最寄り駅に呼び出していたらしい。
流石に2時間駅で話し込むことはねえだろ、今生の別れでもあるまいし。
そういう計画性ない所も含めて、なんか楽しくてずっとつるんでたんだよな。
「どうせなら近くのゲーセン寄ってく?爆盛れプリSNSに上げようぜ。」
「おお!いい!!行こーぜ伊織!しかもあそこ、今キキララのUFOキャッチャーあんだよ!」
俺の事なんか忘れてどんどん走っていく男は、昨日の県大会で余裕の優勝を飾った脚力の持ち主だ。
追いかけても無駄だってわかるからのんびり歩いていたのに、後ろに居ないと気づくや否や引き返して俺の腕引っ掴んで走り出すからマジモンの体力おばけ。
足がもつれないように何とか後に続くけど、尻ポケットから覗く財布にピンク色の髪の毛が見えちゃったから思わず吹き出した。
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