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キス以上の事だって、この家のまさにこの場所で沢山して来た筈なのに。
口と口をくっつけただけ、一瞬唇を舐められただけで心臓が飛び出て死にそうなんだよ。
それだけ佐々木の事を想っていて、想い合えていた事が信じられなくて、夢みたいな幸せがどんどん押し寄せて来て、そのスピードに頭が追いついていないんだ。
大好きな君が、俺の気持ちを知ってもまだ隣に居てくれるって事が嬉しくてたまらないんだよ。
「っへへ、何それ。暁人さん本当に可愛い。」
「…別に可愛くないっていつも言っているだろう。」
ぽんと頭に手を置かれ、頬へのキスは恐らく「わかったよ」の合図。ちょっと物足りなそうな顔をした佐々木には悪いが、俺の命の火が今日で消えてしまわぬよう是非配慮していただきたい。
その後はこれまでの互いの多過ぎる誤解を解く時間にあてた。
男が好きだなんて特殊な恋愛相談を本人にする奴がどこにいる、とか…娘がいたらそりゃ叶わない恋と思うだろ、とか。同性に抱く事自体初めての感情に、バカみたいな早とちりが重なった結果起きた悲劇。
だが、それを2人して笑い飛ばせる関係になれたのだからまぁ良しとする。
小恥ずかしいが所謂恋人繋ぎというやつを、佐々木の手と作りながら過ごした。
「そういえば、さっきこーちゃんから連絡来てた。」
「へえ、何かあったのか?」
趣味は乙女な赤髪少年“こーちゃん”の話も、ただ賑やかな友人の話なのだとわかれば、むしろ楽しそうに教えてくれる佐々木が可愛いとすら思う。
「えっとね、彼女出来たらしいよ。」
「そうなのか。」
「うん。何かね、暁人さんと一緒にいた松井ちゃん?だってさ。」
「ごふっ!」
まさか彼女が番号付きレシート(佐々木によって散り散りになったが)の松井さんだとは思ってもいない佐々木は、笑いながら繋がった手を振り回す。
友達に恋人が出来りゃそりゃ嬉しいもんな。
「アイツ純粋過ぎてたまに怖いからさ、女の子に引かれないか心配。……そういえば松井って名前どっかで見た事ある気が──。」
「まあまあそれはいいだろ。あは、あはは……。」
俺の気持ちは知っているだろうし誤解も無くなった。何より松井さんが赤髪少年とくっついたのなら今更気にする意味もないのだが、あの日のブラック佐々木が蘇るから彼女の話をされるのは少し気まずさがあった。
「ねぇ、俺らも付き合お?」
「………ん…ぁあまり、人に言うなよ。俺が逮捕される。」
「ぜーったい内緒にする!」
此方のスマホも“松井”と表示されたメッセージの通知が来たが、多分もう返信しなくていいだろう。あとで連絡先は削除しておけばいいか。
すっかりワンコに戻った佐々木は見えない尻尾をブンブンと振り回し、俺はそれを宥めるように、もう一度力一杯抱きしめてやった。
彼らの記念日は、俺達にとっても忘れられない大切な日となった。
これから佐々木は夏休み。俺も久しぶりに、早く帰れるよう仕事に精を出してみようか。
第1章 『恋人になる為に(仮)』 fin.
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