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黒色の闇 前編
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_頭が痛い。周りの視線が怖い。もう何も見たくない。
もう何も聞きたくない。なのに、周りの視線や声が消えて
くれることはない。
だから青年はフードを被った。
何も見えなくするために、何も聞こえなくするために。
それでもあの声は脳裏にこびりついて消えない。
?「お前は何故いる?」
青年の中の何かが問うた。
黒希「俺は柚希を守るためにいる。」
それは青年が最初から託された指名。
?「なら、そいつを守ることは出来たか?」
黒希「....。」
それは青年が後悔していること。
?「守れもしないのに居る意味なんてあるのか?」
黒希「っ...!!そ、れはっ....!」
?「お前が守ることが、助けることが出来なかった所為で、
あいつは今、二つのトラウマを背負っている。違うか?」
黒希「...それは......」
?「なら、お前のいる意味なんて、お前のいる価値なんてないんだ。
早く消えてしまったらどうだ?」
黒希「ち...がっ....俺、は...ただ...お...れ...は..........
ぼくは....僕はどうして居るの?」
何かが壊れる音がした。
何かが崩れる音がした。
そう、これが黒希の病み気の始まり。
*****
柚希は幼いころ、いじめられていた。
黒希はそれを知っていた。一番近くで見ていた。
だって、柚希は黒希で、黒希は柚希だったから。
だから、尚更一番近くで見ていたのに、助けることが
出来なかったことをずっと後悔している。
柚希は「気にするな」と言うが、過去の事はそう簡単には消えてくれない。
柚希は昔から強かった。
泣き虫で、ドジで、よく怪我をしていて、周りからいじめられていた。
しかし、それでも柚希はけして逃げ出すことはしなかった。
逃げずにいつも前を向いて進んでいた。
そして、頑張った柚希は中学になるころには
まったくの別人のように変わっていた。
前の長かった髪を切り、ドジだった面もなくし、
泣くことも無くなり、周りに明るく笑顔を振るまっていた。
それに比べて、黒希はどうだっただろうと考える。
柚希がいじめられていても、見ているだけ、聞くだけ。
そして、たまに「大丈夫?」と声を掛け、少し話を聞く。
それだけだ。
そして、今だって、柚希が変化したのをマネするかのように、
性格や見た目を変えて、終わり。
黒希「(僕は、本当にいてよかったのだろうか?)」
黒希「っ...はぁ...はっ...!」
視界がにじみ、息がしづらくなる。苦しい。
黒希「だれ...かっ....たすけ...て...」ボソッ
そう言って一粒の涙が頬を伝い、それに続くようにして
涙は止まることなくあふれ落ちてくる。
黒希はフードを強く握り、深く被ると、その場に座り込んでしまった。
?「___ ____ 」
?「__ ___!」
仲間の心配する声が聞こえるている気がするが、今、それに
反応する余裕なんて黒希にはない。
黒希「(嗚呼、最悪だ。よりによって、"こいつら"に
バレるなん...て...)」
黒希はそんなことを思いながら瞼を閉じ、意識の波に呑まれていった。
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