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ちゃらお君の寂寥
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チチチっと鳴く鳥の声に恭弥はゆっくりと目を覚ます。ズキズキと痛む頭を抑えて何とか起き上がると自身の部屋である事に気がつく。しかし昨夜_日付は変わっていたから今日の出来事ではあるが_はバーで1人で飲んでいたはずだと記憶を呼び起こそうとする。
(1人で飲んでて、眠たくなって、それから…それからどうしたっけ?なんか、誰か…)
誰かが俺を見ていた、と恭弥は考えるが痛む頭が思考の邪魔をする。何かが引っかかるとくしゃりと髪をかき混ぜた時にふと覚えのある感覚に戸惑う。髪を梳かれ、撫でられた…そんな感覚。
そんなわけがないと自嘲するがその口元が引き攣る。確かに覚えているのだ。前髪を払うように指の背で撫でて、そのままするりと頬を伝う手の温もり。思い出したくもないが、その手に擦り寄ると「いい子」と言われた。覚えて…いる。
「ッ!!」
羞恥心か憤りか、それともまさか喜んでいるのか、恭弥自身にもわからなかったがぼふりと枕に頭から突っ込む。頭痛が更に悪化したがそれさえ気にならないほどの感情に揺さぶられる。ドクドクとうるさい心臓を押さえつけるように胸元を握る。
一度バンッとマットレスを叩くと起き上がってよろよろと洗面所に向かった。服を脱いで風呂に入ろうと鏡を見るとどこか恍惚とした表情の自分が映っていてそれを振り払うように頭から冷たいシャワーを被った。
____
昼頃になってようやく学校についた恭弥は職員室で生活指導の教師にガミガミと説教をされ、しかしそれを右から左に聞き流すと教室に向かった。
「あれ、恭弥じゃん!今日は休みかと思った〜!」
もう6月とはいえさすがに開け過ぎだろうと思うほどシャツのボタンを外し、谷間が見えるほどに首元を寛げた女子生徒が胸を押し付けるように恭弥の腕に絡みついた。それを恭弥は振り払うことはなくニコリと笑う。
「サボろうかとも思ったんだけどね、俺偉いからちゃんと来た〜」
「遅刻してる時点で偉くないでしょー!」
そんなやり取りを何人かと交してようやく教室に入る。教室でも数人と言葉を交して目的の人物の元へと歩く。
「斗真」
「…?恭弥か、おはようって時間でもないな」
「そうだね」
斗真と呼んだ座っていてもわかる長身のイケメンな男は新藤斗真(しんどう とうま)だ。斗真は恭弥の幼なじみの1人で最近恋人にご執心の男である。
そんな斗真がスマホを眺めて嬉しそうにしている…とわかるのは幼なじみたちくらいで、傍から見れば真顔そのものなのだが、恭弥はその様子にまたかと思う。
「ちとせ?」
「あぁ、昨日帰りにカフェに行ったんだが_」
斗真は昨日のちとせの可愛さを恭弥に語って聞かせた。正直恭弥はちとせの可愛さには興味が無いのだが、幼なじみであり親友であり仲間であったはずの斗真の変化に寂しさのようなものを感じつつ耳を傾ける。
(ほんと、変わったな…)
そう思う。斗真はこんな風に誰かの話を嬉しそうにするやつではなかった。恭弥と同じで他人に興味などなく、女も男も来る者拒まず去るもの追わずを貫いてきた。恭弥のように相手を泣かせることこそ少なかったが、それこそ相手に全く期待させないほど関心がなかったからだ。
それがどうだ、藍原ちとせという外進生と出会った途端に執着し始めた。始めこそいつものように遊んでいるだけだろうと思っていたがどうやらそうではなかったようで、今では無理やりではあるが恋人同士になったと言う。
同類だと思っていたからこそ、裏切られたなどと思ってしまった。誰にも本気にならないし、それが当然で、それでいいと思っていた。いつだって隣には同じ人種の斗真がいたから。それが失われた喪失感は恭弥の心にぽっかりと穴を開けた。
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