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ちゃらお君の『好き』
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一気に現実に引き戻された。
(ここはどこで俺たちは何をしていた?)
恭弥は離れていく静の服を掴もうとしていた手を慌てて引っ込めた。そんな恭弥を見下ろす静はそれはそれは愉しそうに嗤っていた。
「きょーや、着いたぞ?」
「〜〜っ‼︎」
「何してるの?ドア閉まっちゃうよ?」
吊り上がる口元を片手で隠しながら優しく自分を呼ぶ静を睨みつける恭弥の顔は真っ赤である。
(最っ底‼︎ほんと意地悪い‼︎せいがこんな性格だったなんて‼︎)
最近になってやっと静の性格の悪さや本性に気が付き始めた恭弥は内心で静を罵倒するも口には出さない。意地の悪い静に翻弄されることが嫌ではないのだ。
「恭弥怒らないで。ごめんね、可愛くてつい…ね?」
そう言って頭を撫でて顔を覗き込んでくる静からぷいと顔は背けるものの手を払い除ける事はしないし、『可愛い』と言われて悪い気もしないのだから恭弥は静にまんまと嵌められたわけだ。
(初めからこんな性格だって知ってたらっ……………知ってたら……?)
付き合わなかっただろうか…?
恭弥はちらりと部屋のドアを開ける静を見上げる。
(イケメンだよな、ほんと…斗真といい勝負)
「何、じっと見詰めて。俺の彼氏かっこいいな〜って?」
「うん」
部屋へと足を踏み入れ、電気を点けながら静が冗談めかして問いかけると恭弥は即答した。その瞬間、
(あ、笑う…)
恭弥はそう思った。
予想通り、静はふっと目を細めて笑った。
(やっぱりこの顔…)
「好きだなぁ」
「え」
口から出ていた。静は目を丸くして恭弥を見ていた。恭弥は自分が何を零してしまったのか気がつかず数秒固まっていた。
キィ…バタン__
扉が閉まる音に我にかえった恭弥が慌てて弁明する。
「あ、え、いや!顔っ顔が!その、せいのその顔がっ好きだなって…思って…………あれ?」
「そっかぁ恭弥は俺の顔が好きなんだ?思わず口から出ちゃうくらい?よく見詰めてくるもんね?」
ニヤニヤと心底愉快そうに静は笑う。誤解を解くつもりが盛大に墓穴を掘ることとなった恭弥は耐えきれず今しがた閉じたドアを押し開けて逃走を図る。
が、それを静が見逃すはずもなくドアノブに触れた手は掴まれ、腹には手を回され捕らえられる。再びドアは閉まった。
「靴、脱ごっか」
優しいその声は聞き慣れたいつもの静の声なのに、なぜか従わなくてはいけないという一種の強迫観念のようなものを抱いてしまう。
動けない恭弥に静は「きょーや?」と甘く迫る。おずおずと靴を脱いだ恭弥は窺うように静を見上げた。
「ん。いいこ」
(やっぱり、好き…)
静の顔も、声も、唇も、瞳も、言葉も、全部が。
(でも、わかんないや。恋心とか愛情とかそーいうのは、俺にはやっぱりわかんないや…)
近づいてくる静の顔をギリギリまで見詰めてから目を閉じる。合わさる唇の感触が気持ちいい。身体が引き寄せられて、代わりに唇が離れていく。そのまま抱き上げられてまたキスをする。
運び込まれた寝室で静に抱かれる。
甘くどろどろに溶かされて自分を見失いそうになる。元々自分がどんなだったか、忘れてしまいそうで怖いと恭弥は思った。
(離れられなくなりそう…)
甘さは消え、代わりに獰猛さを湛えた瞳が恭弥を見下ろしていた。最近になってみるようになったそれに、恭弥はまだ慣れない。それでもなぜか違和感はなくて、自身に触れる優しい手とは裏腹なそれに酷く惹かれる。
(これも、好き…)
無意識に恭弥は手を伸ばしていた。欲しいと思った。
(ぜんぶ、おれの…)
全部、全部…静の全てを恭弥は欲しいと思った。
伸ばした手の指先が静の頬に触れた時、静は恭弥の心の内を見透かしたように笑った。恭弥にはその顔が「いいよ」と言っているように見えて嬉しくてにへらと笑った。
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