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ちゃらお君の拒絶
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朝、というには遅い。昼前に目を覚ました恭弥はリビングの入り口で愕然としていた。
見たことのある男がソファに座っていた。
その男は恭弥を見て「おはよう」と微笑む。
おかしな話だ。黒縁のメガネを掛けた男は恭弥の高校の養護教諭で、生徒会の顧問をしている人物だ。それがなぜか恭弥の恋人の家にいて、その恋人と同じ声で恭弥に語りかけてくるのだから。
「何…何で…」
お前がここにいる?
そう問いかけたいが答えなどもうわかりきっている。
「あー…」
静がメガネを外した。
(やば、忘れてた)
静は内心で焦っていた。メガネはPC作業をするために掛けていたのだが、それを恭弥に見られてしまった。
(流石に気付いたみたいだな。さて、なんて言って機嫌を取ろう)
絶対に拗ねるかキレられるだろうと考えて静は引きつりそうな口元に何とか笑みを貼り付けて立ち上がる。
「恭弥、座って話そう?」
そう言って静が一歩近づくと恭弥は一歩下がった。怯えたような泣きそうな顔をした恭弥に静は一瞬躊躇ってしまった。その瞬間、恭弥は来た道を引き返して寝室に駆け込んだ。
(まずい…‼︎)
静はそう思ったがもう手遅れだった。恭弥は寝室に入り扉を閉めると内側から鍵を掛けた。
「恭弥、黙っててごめん。騙すつもりは…なかったって言ったら嘘になるけど…でも何ていうか…」
何を言っても逆効果な気がしてきて静は言い淀む。
「とにかく…俺が悪かった。頼むから出てきてくれないかな、顔を見て話がしたい」
できるだけ優しく話しかけるが恭弥からの返事はない。
「きょ…
かちゃ__
静がもう一度恭弥を呼ぼうと声を出したところで鍵の開く音がしてほっと安堵の息を吐いた。
が、出てきた恭弥の顔に息を飲む。
静には…正確には『せい』には向けられたことのない嫌悪と拒絶を孕んだ目を恭弥はゆらりと緩慢な動きで静に向けた。
「どいて」
地を這うような低音。服を着替えて荷物を持った恭弥が出てきた。
静は自身の考えが甘かったことに今更後悔していた。恭弥が自分に懐いているのは明らかで、多少怒らせたってちょっと下手に出て甘やかしてやれば直ぐに擦り寄ってくる。今回だって想定外のタイミングだったとは言え大丈夫だろうとたかをくくっっていた。
それがどうだ、恭弥は静を射殺さんばかりの目で一瞥した後もう用はないとでも言いたげに玄関に向かって行ったではないか。
静はそれを止める術も言葉も持ってはいなかった。ただじっと、恭弥の背を見えなくなるまで見ていることしかできなかった。
バタン…と閉じた玄関の扉が物寂しい。
ふらりと壁に凭れかかった静は天を仰いで大きく息を吐いた。そのままずるずると座り込んで頭を抱える。
(あー…これはやばいよなぁ、別れるって言われそう。言われるだろうな…二度と口聞いてくんねぇかなぁ…それはちょっと、きっついな…
………何だよ、マジになってんじゃねーか。あんな顔させて、あんな目で見られて…あーくっそ……)
「いてぇ…」
グッと心臓のあたりを握り込んで、静はしばらくそうしていた。
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