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ちゃらお君の恋愛事情
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ガラガラッ__
放課後の人の出入りのないしんとした保健室に突如無遠慮に扉を開く音が響いた。
「どうしました………か………」
予想外の人物に美津島静は呆気に取られる。
「話、あるんだけど今いい?」
「あ、え、うんはいどうぞ…?」
先生として話せばいいのか、『せい』として話せばいいのかわからなくて混乱した様子の静は日本語が変になっている。
恭弥はそれを笑う余裕もなくてとりあえず扉を閉めて鍵をかけた。
「せいはさ、ずっと俺を騙してたの?」
落ち着きを取り戻した静は一つ小さく息を吐いてから質問に答えた。
「………そう、なるね。初めてバーで恭弥を見つけた時からここの生徒だってことは気がついてた」
「なんであんなことしたの?」
そう聞かれて静は黙り込んだ。つい、なんとなく、魔が差した。そんなことを言えば恭弥は怒るだろうと何も言えなくなった。
「最初から、俺を揶揄ってた?」
「それは違う。確かに最初に手を出したのは…その、興味本位というか、知ってる人間があんなところにいたから、つい………………。初めて生徒会室で恭弥を見た時に俺を見る目が他と違っていたから興味が湧いた。生意気そうなガキを泣かせ…………」
静はそこで言い淀む。お互い複雑そうな顔で見つめ合う。暫しそのままで、恭弥が何も言わなかったため静はまた口を開いた。
「意外だった。笑った顔が可愛いと思った。初めはなんとなく黙ってたけど、段々バレたらお前が離れてくと思ったら言えなくなった。あの日バレたのは想定外だった。もっとタイミング良く言うつもりだったんだ」
静は何かを堪えるように語った。
(ずっと言えなくて、せいも苦しんでたのかな…)
静が騙したくて黙ってたわけじゃないことは恭弥ももう理解した。でもまだ気になることはある。
「俺のこと、知ってたならどう思った?学校での俺とせいの前での俺、見てて滑稽だった?」
そんな風には恭弥も思っていないが、自嘲するようにそう言ってしまった。恭弥は怖くてそう訊ねることしか出来なかった。
「そんな風に、俺が考えてたと本気で思うのか?」
僅かに怒気の篭った声。恭弥はハッとした。
「そ、れは…」
はぁ…と自身を落ち着けるように静は息を吐いたが、恭弥はそれに怯えたような顔をした。
「恭弥、確かにお前の言動に初めは驚かされた。でもそれを滑稽だなんて思ったことはないし、むしろ俺にだけそんな姿を見せてるんだと思うと嬉しかった。学校でのお前と『せい』の前でのお前が違えば違うほど…俺は、ほかのヤツらの知らないお前を知ってるんだって、俺は特別なんだって思ってた」
射るような目で見られて恭弥はドキリとした。
「甘やかして、どろどろに溶かして、俺しか見えなくして、なんなら監禁して、支配したい。なぁ恭弥、俺のお前に対する感情はさ、恋とか愛とかそんな小綺麗なモノじゃない。ただの独占欲と支配欲だ」
急になぜそんなことを言い出したのか恭弥は理解できなくて困惑する。
「俺に本当の自分を知られるのが嫌だとか、そのせいで嫌われたくないとか思ってるのは知ってる。自分の本心を晒すのが怖いってのもわかる。そのくせ相手の全部が欲しいんだ。勝手だよな?」
恭弥は自分の話をしているのだと最初は思ったが、なんとなくそうでは無い気がした。
(誰の話…?)
「わかんない?」
静が困ったように笑った。
「俺はね恭弥、お前に嫌われたくないんだ」
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