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つまみは専用コーナーから適当に見繕い、レジを終えると急いで来た道を戻る。
竜一がいつ来るか解らない。
もしかしたら、今夜はずっと一緒なのかもしれないし、来て早々に帰っちゃうかもしれない………
どちらにしても、こんなの用意した所で、全くの無駄足かもしれない。
……でも
竜一が少しでも、喜んでくれるなら……
急いでアパート前までサンダルで走る。と、既にアパート前にはそれらしき車が停まっていた。
通りすがりに中をチラリと見るけれど、運転手は今日もモルではない。
「………」
それが、僕に不安を与える。
モルの身に、何か遭ったのか……
「……!」
アパートを見上げると、スーツ姿の竜一が二階の廊下を歩いているのが見えた。
再び走り、慌ててアパートの階段を上りきる。
そして、玄関前に立ち止まる竜一の元へと駆け寄った。
パタン……
「……ん、」
部屋に入るなり
竜一に脇を抱え上げられ、踵が床から離れ爪先立ちになる。
その強引で乱暴なキスは
僕の心の中まで、甘く激しく掻き回す。
「……何だ、これは」
唇が離されると、僕の手にあるビニール袋を見た。
「ビールか……?
悪いが、今は飲みたくねぇ」
僕の手から奪ってビニール袋の中を見た竜一は、直ぐにその口を閉じる。
「走って来た時振り回してたなら、尚更だな」
「……あ……」
手首を掴まれ、強く引っ張られる。
真ん中にあるガラスのローテーブルの上にガサリとその袋を置くと、竜一は壁際にあるベッドへと、僕を乱暴に押し倒した。
「……ま、待っ」
「うるせぇ」
仰向けに倒されたまま慌てて口を開く
と、その唇を竜一の唇が塞ぐ。
……汗かいて、汚いのに……
本当に僕は、竜一の為に
何の用意も出来ていない事に、落胆した……
「……さくら」
ベッドに沈む僕に、竜一が声を掛ける。
竜一は上半身裸のまま、ベッドの外で煙草を吸っていた。
「………」
愛され過ぎた僕は、首筋から腹にかけて、幾つも桜の花びらが舞い散っていた。
性急すぎる体の繋がりは、僕の心を置いてけぼりにする。
その事は竜一も解っているのだろう……
動かない僕から発する雰囲気を、感じ取っているのは確かだ。
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