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……ジャラッ
動く度に、小さな音がする。
その度に……僕がハイジの所有物だという事を思い知らされているようだ。
「……痛く、ねーか?」
浴槽の中……背後からハイジの体にすっぽりと収められ、ぎゅっと抱き締められる。
竜一とは違う……竜一より細く、だけどしなやかな筋肉が付いた、男らしい腕。
「………」
「なんか、喋ってくれよ」
少し寂しそうな声……
ハイジの指先が、僕のフェイスラインをそっと撫でる。
それが、僕の気持ちを探る行為なんだって事は……解ってる。
「……なぁ、さくら……」
「………」
「オレと離れてから今まで、どうしてたんだよ」
ちゃぷ、ん……
浴槽内のお湯が揺れ、水音が浴室内に響く。
ハイジと別れたのは……次にやる仕事が警察に捕まるかもしれない程ヤバイものだから……と言われた。
僕にはそれが、結局何の仕事だったのか……知らない。
どうしてハイジがそんな危険な事を、犯さなければいけないのかも……
折り畳んだ膝に手を掛け直す。
と、また水面が揺れ水音が響く。
「……どうせ、知ってるんだよね」
「まぁ、な。大抵の事は……でも、」
「それなら……聞かないでよ」
樫井秀孝の一件から、僕は何度もマスコミに取り上げられた……
それから、凌の事や若葉の事でも……裏社会の人間なら、きっと一度くらいは耳にしている筈だ。
「拗ねんなよ」
「……」
「オレは樫井の話を聞くまで、さくらは堅気の世界へ戻って、幸せに暮らしてるモンだと思ってたし……そう信じてたんだぜ……」
ハイジの指が止まる。
「……あぁクソッ、やっぱすげぇムカつく」
その指が、小刻みに震えた。
「薬使ってさくらを思い通りにしやがって……ぜってーぶっ殺してやる」
怒りで震える声。
今のハイジでは、冗談にもならない……
「……ハイジ」
「あン?」
「そういうの、止めてよね」
僕を包む、ハイジの腕にそっと触れる。
……あの日、僕に声を掛けた金髪の成りの果てを思い出す。
……ごめん、ハイジ……
ハイジは今でも、こんなに僕を思ってくれているのに……
……僕は……
「……!」
ハイジの指先が、僕のフェイスラインから下唇へと移動する。
そして紅をさすかのように、そっとなぞり……弄ぶ。
硬く主張したハイジのモノが、僕の腰に当たっているのがわかった。
「……だったら、しようぜ」
首を竦めれば、自分の立場を思い出させるかのように……首輪の鎖が小さな音を立てて揺れた。
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