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腿に触れた指が内側へと潜り込み、柔らかい部分を何度も揉みしだく。
「堕ちていく姫の姿が堪んなくてよ……
今も時々、思い出しながら抜いてんだぜ……」
執拗に厭らしく、柔肌に指を食い込ませながら、付け根の方へと這い上がっていく。
「………っ、!」
「楽しかったよな、″あの日″」
抵抗を見せないと解ると、男の小指と薬指がショートパンツの中にじわじわと侵入してくる。
「ハイジには内緒にしといてやるから、シようぜ……」
「……邪魔だから、退かしてくれない?」
努めて冷静に、男へ冷ややかな視線を向ける。
あの日の記憶は、確実に僕に襲い掛かった。
だけど、先程の怒りがまだ僕の心を支えていたのかもしれない……
僕は……竜一のオンナだ。
……こんな下衆に屈して、思い通りにされてたまるか。
「……なんだと?!」
僕の言動にカチンときたのだろう。
ハイジの威を借る僕を。何の力もない……男に支配される非力な″女″である事を、証明させようとしたのだろう……
男はもう片方の手を素早く伸ばし、僕の手首を掴み上げる。
と同時に、僕の両足の間に片膝を捩じ込んできた。
「……″オンナ″のクセに!」
はぁ、はぁ、……
男の荒い息が、斜め上から降り掛かる。
「………」
だけど、逃げたくはなかった。
あの時植え付けられたトラウマは、確実に僕の指先や膝……脳内までも震えさせ、萎縮させる。
一方で心臓は、肥大化してしまったかの様にバクバクと激しく早鐘を打つ。
……それでも……逃げたくない……
無表情のまま、相手の瞳を睨みつける。
すると男の顔が険しくなり、僕の内腿を弄った方の手で、僕の顎先を強く押さえ込んだ。
……こんな奴、怖くも何ともない……
何とか冷静さを取り戻そうと、息を整える。
だけど、トラウマの沼は直ぐそこに待ち構えていて。
……気をつけなければ、簡単に飲み込まれてしまう……
……ドクンッ
「………!」
意志に反した、冷や汗。
……動悸……
痺れる指先。
迫りくる、男の唇……
「………止めとけ」
静かに響く、低い声。
男の片腕を掴み上げる、黒い影……
「ハイジに殺されたくなきゃあな……」
そう呟いた唇が、男の耳元に寄せられる。
「………」
「……っ、太一さ……」
それが何やら小さく蠢くと
次第に男の手から、力が抜けた。
顎から手が外れれば、じりじりとした頭の痺れが一瞬で取り払われた。
「………」
男のギラついていた眼光が瞬時に弱まり、その顔がみるみる青ざめていく。
……何を吹き込んだんだ……
口角を吊り上げ、不気味に微笑む太一と目が合う。
「……コイツの事、許してやってよ。
ついでに、″あの日″の事も……」
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